本研究では,各種経済的手法の低炭素化技術開発の促進・普及への誘因には差異が存在するという仮説を立て,これを検証するために経済学を中心とした複合領域分野での理論・実証研究の方法の構築を目的とした。 第一に,「技術革新と経済の関係」に関する経済学分野での展望論文の作成をおこない,技術革新の生起条件,新古典派成長理論における外生的成長理論から内生的成長理論への展開,市場競争下の技術革新の促進・普及に関する学説の流れを捉えた。 第二に,各種経済的手法利用が低炭素化技術開発の促進・普及誘因に与える大きさは技術種類別に異なるとの仮説を立て,今回の研究では,低炭素化技術のうち「再生可能エネルギー利用発電技術」について,国内外の文献に基づいて,最新の技術仕様・生産量・生産費用等のデータ収集をおこなったが,太陽光発電や風力発電等の関連・周辺技術は累積生産量の急速な拡大に伴い学習曲線効果が働いており,より正確な実証分析結果を得るには生産者の技術・生産費用・収入データに関する継続的な蓄積が必要である。その意味では,再生可能エネルギー固定価格買取制度の効果分析は日独の比較分析が期待される。再生可能エネルギー固定価格買取制度(補助金)が研究開発(R&D)にどのような影響を与え,それが新古典派成長理論の成長モデルにおいて,どのように評価されうるかというマクロ経済の理論・実証研究は数が少なく,今後の課題として取り組みたいと考える。 第三に,各種経済的手法の「低炭素化技術開発の促進・普及誘因メカニズム」の分析手法である一般均衡モデル分析の前提とする資本財の生産関数の問題点及び再生可能エネルギー利用発電の波及効果を分析する目的の拡張産業連関表の分析における課題を再吟味した。なお,本研究のうち文献調査等の内容を取り纏めたものを2014年6月に書籍として刊行する。
|