研究課題/領域番号 |
23530305
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
春日 秀文 関西大学, 経済学部, 教授 (40310031)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 開発援助 / 援助の有効性 |
研究概要 |
本研究は、発展途上国の経済開発や福祉向上を目的として供与される開発援助がどのように成果に結びつくか、援助の成果はどのような要因によって決定されるかを明らかにすることを目的としている。平成23年度は、各分野の支出がどのような過程を通じて成果に結びつくか(支出と成果の関係)、成果はどのような要因に依存するか(成果の決定要因)を説明する理論モデルの開発を行った。援助の有効性については多くの先行研究が存在するが、実証研究において援助の成長効果はほとんど観察されていない。本研究では援助の有効性が観察されない理由を説明するため、援助国が被援助国の社会厚生を考慮するという点で利他的であると仮定したモデルを用いて、利他主義が援助の成長効果を弱めることを示している。具体的には、所得分配を考慮した成長モデルを利用し、援助による公共投資と貧困家計への所得移転の効果を理論的に計測することで援助とその成果の関係を示した。主要な結果として、1)被援助国のガバナンスの欠如が著しい場合に援助の成長効果が小さくなる可能性があること、2)被援助国はガバナンスの改善、税収の拡大、公共投資の努力を怠る傾向があること、3)貧困と低成長が援助を長期化させ援助額を増加させるため、援助1ドルあたりの効果は高成長国で高い値となることが示された。これらの結果は、援助供与国の利他主義が援助の成長効果を低下させることを示唆する。また、被援助国のガバナンスの欠如が大きいほど成長効果は小さくなる。一方で、援助の厚生効果は低所得かつ低成長の国で大きくなるため望ましい援助政策として低成長国での貧困層の直接支援が支持される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は、開発援助がどのように成果に結びつくか、どのような被援助国の特性が援助の成果に影響を及ぼすかを明らかにすることである。そのために、1) 援助とその成果を説明する理論モデルの開発、2) 被援助国の特性に関する指標の開発、3) 援助の有効性についての実証研究を行う予定である。平成23年度の研究では、各援助分野の支出と成果の関係および援助成果の決定要因を考えるための理論モデルの開発を行った。このモデルでは、貧困家計を直接支援する所得移転と経済全体の生産性を高めるインフラ分野への投資という二つの分野の援助を考慮した成長モデルを利用している。このモデルに所得が異なる複数の家計を導入することで所得分配を考慮し、さらに税収の一部が消失してしまうという意味での政府の非効率性を導入した。これらの工夫により、被援助国の所得分配およびガバナンスの違いがどのように援助の成果に影響するかを分析することが可能となった。このモデルでは、援助額と成長率・厚生水準の関係を計算することができる。所得分配、ガバナンスを含むパラメータの値を定めて援助がどの程度成長率や厚生水準を変化させるかを計算した。被援助国の特性と援助の有効性の関係を考えるために、さまざまなパラメータの値について援助の有効性を計算し評価を行った。上記のように、理論モデルの開発については一定の成果が得られたため、論文としてまとめ筑波大学で行われた日本経済学会秋季大会で報告を行った。報告時に他の研究者から得られたコメント等を参考にして論文を改訂し、できるだけ評価の高い学術誌に採択されることを目指して投稿中である。また、理論モデルから得られた仮説についての実証研究を行うため、データの収集および入力などの準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は平成23年度に開発した理論モデルから得られる仮説についての実証研究を進める。検定する重要な仮説は「援助の有効性はガバナンスに依存する」というものである。この仮説の検定のため、数多くある既存のガバナンス指標が利用可能か検討し、理論仮説と整合的なものを見つけ必要ならば加工する。明確な結果が得られない場合は、複数の指標を組み合わせて新たな指標を開発した上で頑健な結果が得られるまで推定を行う。一定の成果が得られた段階で、論文としてまとめ学会報告を行う。その後、他の研究者から得られたコメントを元に改訂し、できるだけ評価が高い学術誌に採択されることを目指して投稿する。現時点では所得移転とインフラ投資のみを理論モデルで明示的に扱っているが、他の重要な援助分野である教育についてもモデルに導入することを検討する。教育については、単なる所得移転とは異なり人的資本への投資であることから生産性の向上につながるが、その成果は経済インフラへの投資ほど短期的には実現しない。この点を考慮したモデルを開発し、実証研究を行うためのフレームワークを検討する。これについても一定の成果が得られた段階で論文としてまとめ、学会等で報告を行う。また、そこから得られる理論仮説を検定するためのデータの入手を行い、実証研究を行う。現在投稿中の論文についても査読者のコメントが得られた時点で改訂し、採択されるように投稿を続けていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究において研究経費は主に論文・図書の購入、データの収集・加工、国内外の学会での成果報告に用いる。平成24年度も以下のようにデータ収集と成果報告に研究費を使用する計画である。1) 被援助国の特性を表す指標を作成するため、政府支出やガバナンスに関するデータ・文献をIMF,OECDなどの国際機関やその他の調査機関から購入する。また、古い文献等でCD-ROMやインターネットから入手できないものがある場合は内外の研究機関等を訪問し入手する。必要な場合はデータ加工のための研究補助を利用する。また、データの加工・統計処理に用いるソフトウェアの購入費用および年間保守費も計上する。2) 一定の成果を得られた時点で論文としてまとめ、学会で報告する。論文は海外の学術雑誌に投稿するため英文校閲の費用を計上する。また、成果報告を行うための旅費を計上する。
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