研究課題/領域番号 |
23530314
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鳥居 昭夫 中央大学, 経済学部, 教授 (40164066)
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キーワード | 経済政策 / 産業組織論 / 産業論 |
研究概要 |
本申請研究の目的は、産業融合について、理論的および実証的に分析を行うことである。産業融合下では、企業はこの環境変化に適合するため、それまで異なる産業分野に属していた企業と競合し、特に隣接領域に進出していく傾向を持つ。その結果、差別化が強い下での企業間競争が主要な競争のタイプとなる。2012年度には、特にこの部分を中心に競争の特性がどのように変化するのかを中心に理論的分析を行った。特に、異業種間企業の競争が、通常の競争形態と異なるのは、価格における競争のみならず、製品ライン、サービス範囲などの企業の供給スコープを設定しながらの競争となることである。どこまで異業種に属していた生産ラインまで供給することにコミットするのかが重要となる。この企業間のゲームの戦略空間の広がりによって、通常のゲームの枠組みを拡張しなければならないが、この枠組みは一定程度完成することができている。このタイプの競争の帰結は、自らのテリトリーを新しく築こうとする傾向を示唆するものであり、一旦融合が始まると急激に競合が進むという予想は見直さなければならないことが分かっている。現在、このフレームワークを拡充しているところである。 2012年度中に研究成果を海外学会において報告することを予定していたが、2011年度に完成していた段階の論文よりも、進展した内容の論文を作成できる見込みが立ったこと、また申請者が2012年度に所属先を変更したこともあって、学会報告は2013年度に延期することとした。現在、すでに論文はEARIE(European Association for Research in Industrial Economics)2013年度大会にアクセプトされている。2012年度中に予定していた経費の使用も学会報告に伴うものを中心としていたため、予算の大きな部分を2013年度に使用する計画を立てている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度には、実証研究とケーススタディの準備を中心とした作業を計画していた。平成23年度の準備の上で、これらの作業は順調に行われたが、未だ成果を論文の形で出す段階には至っていない。特に産業融合が顕著なエネルギー産業を中心に実証分析を行うことが適切であると分かり、これらの事業を中心に、資料を収集し、分析を加えている。また、理論分析のモデルにおいて、当初予期していなかった形でモデルの分析機能を付加する必要が生じたので、その作業も重点的に行なわれ、公表予定の論文の形となっている。それにあわせて、達成部分の説明にあるとおり、当初24年度に予定していた学会報告を25年度に延期をしたため、24年度には論文の拡充と投稿準備を行っている。ただ、これらの予定外の進行も、最終的な結果を拡充する方向に合わせての進行であり、最終的なアウトプットの予想という観点から評価する限り、問題とするものではない。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、本研究計画の完成年度であるため、結果のまとめと、報告等に多くを費やす予定である。第1に、現在投稿中の論文の報告を実現することが必要である。現在投稿中の論文は、中途結果の報告であるため、ある程度限定した内容での論文となっている。さらに、理論部分の論文として、当初計画していた形でこれを完成させるためには、一般的な内容に拡充したものであることが期待される。当該年度中に公刊できるかどうかは現在不確かであるが、できるだけ早い段階で理論部分として、この部分についても発表を目指したい。第2に、平成24年度に整備したデータを下に、実証研究部分を完成させて、論文の形にまとめることが必要である。第3に、第1と第2の理論的分析、実証的分析を補完するケーススタディをまとめる必要がある。いくつかのケースについて、すでに考察を加えているが、それぞれの論文の進行に合わせて、これらのケースについても拡充を加えなければならない。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の予算の使用は、主に上記発表の報告に用いられる。現在、EARIE (European Association for Research in Industrial Economics)年次大会での報告を申し込み、既にアクセプトされている。大会は8月末に開催予定であるので、それまで論文としてできる限りの拡充を施す予定である。さらに、次の段階の論文が完成に近づきつつあるので、これも海外学会ないしは海外誌への投稿を準備し、検討している。残りの予算部分は主に、最終年度として研究を完成させるために必要な作業に伴う経費に用いられる。現在、資料の拡充およびデータ整理の拡充が部分的に必要であることが予想されている。
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