研究概要 |
本申請研究の目的は、産業融合について、理論的および実証的に分析を行うことである。2013年度には、以下の3点において研究をまとめた。 第1に、前年度の研究成果を下に、より一般的な形での理論モデル分析を進めた。異業種に属していた生産ラインを、どこまで拡張することにコミットするのかが、企業間競争において重要となり、ゲームの戦略空間が拡張される結果、自らのテリトリー空間として商品属性空間上に新しく自らの市場分野を築こうとする傾向が存在することが示されている。この成果は、テリトリー制をめぐる競争形態に即して応用し、Competition for Territories under Switching Costと題する論文にまとめ、EARIE2013年度大会において報告した。 第2の方向として、産業融合は一定のスタンダードを構築し、価格および少数の商品属性パラメータのみでは示されない情報の交換を実現するシステムの構築を伴うことが示された。この変化は、2面市場としての性格を産業融合が持つことを示唆している。当然、2面市場特有の問題が発生することが予想される。この知見を下に、産業融合に伴う問題点を、小売市場を対象にケーススタディを行った。この成果はStrategy and Trust in Two-sided Marketとしてまとめ、GRC2014 ,IRBM大会において報告した。 第3の方向として、研究計画の当初の基幹である製造業サーベイデータを用いた産業融合の実態と、その展開が与える効果の包括的実証分析がある。理論的分析で得た各仮説が、ほぼ肯定的に実証されている。産業融合と労働移動の代替性、産業融合と投資活動および研究開発活動との強い相関、垂直的統合の傾向との相関等が確認された。この部分の成果は、日本経済政策学会平成26年度大会共通論題として報告することが決まっている。
|