研究課題/領域番号 |
23530315
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢野 剛 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90314830)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 企業間信用 / 市場の競争性 / 法制度 |
研究概要 |
平成23年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において、我々は以下のような研究成果を得た。今年度は、中国における企業間信用発達-未発達の要因解明の基盤整備作業として、現地聞き取り調査による実態把握とデータの収集・整備を進めることができた。また、そのデータの一部である省レベル集計データによる初歩的な計量分析をおこなった点においても、研究課題の達成に近づくことができた。 第一に、江蘇省・陝西省・貴州省・新彊ウイグル自治区をフィールド対象として、企業・金融機関聞き取り調査がおこなわれた。江蘇省のような先進地域では、政府の腐敗への懸念の少なさや法制度への信頼の高さから、企業は信用取引に積極的であり、また市場参入や創業が活発に行われていることが分かった。さらに、民営企業のインフォーマル金融への依存度も低いことが明らかになった。それに対し、陝西省・貴州省・新彊ウイグル自治区のような後進地域では、政府の腐敗への懸念や法制度への低い信頼を理由として、政府や有力国有企業との政治的コネクションが市場参入・創業の条件となっているケースも多く、現金の前払いによる取引のプレゼンスが比較的大きいことも明らかになった。 第二に、各種の公刊資料に分散している情報より複数の市場競争度変数、法制度機能変数を省・市レベル集計パネルデータの形式で独自に作成することができた。また、中国全土をカバーする中国企業大規模マイクロデータ収集とその整理作業を進展させることができた。これらが次年度以降の計量分析の基礎となる。 第三に、上記の省レベル集計パネルデータを用いて初歩的な計量分析をおこない、その結果、市場の競争性・法制度の質の双方が企業間信用の発展にポジティブな影響を与えていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度には、概ね研究計画で予定したように中国における企業間信用発達要因解明の基礎作業として、現地企業・金融機関に対するヒアリング調査による実態把握に加えてマクロ・マイクロ両面におけるデータの収集・整備作業を進展させることが出来たため。また、そのデータの一部を構成する省レベル集計データによる初歩的な計量分析をおこなえたという意味においても研究計画の予定どおりに達成できている。その結果、次年度以降の現地調査・計量分析に関する研究計画が具体的な日程を伴ってたてられるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査を引き続きおこない本格的な計量分析において検証される仮説の構築をおこなう。そして、その仮説の集計データ・企業レベルマイクロデータの双方における検証をおこなっていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
江蘇省・陝西省・新彊ウイグル自治区における企業・金融機関聞き取り調査(各地計10日程度)のために海外出張旅費を使用する。また、新彊ウイグル自治区における企業マイクロデータを補充するためにその購入費用が必要となる。
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