研究課題/領域番号 |
23530315
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢野 剛 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90314830)
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キーワード | 企業間信用 / 市場の競争性 / 法制度 / 腐敗 / 民営企業 / インフォーマル金融 |
研究概要 |
平成24年度科学研究費補助金の交付を受けた研究において、我々は以下のような研究成果を得た。今年度は、中国における企業間信用発達要因に関して、マクロデータを用いた本格的な計量分析の結果を得たこと、それに基づく現地企業調査をおこなうことができたこと、企業マイクロデータを用いた分析に着手することができたこと、が主要な成果である。 第一に、省レベル集計パネルデータを用いた本格的な分析をおこない、その結果次のような分析結果を得た。企業間信用の発達を促進する直接の要因として、市場の競争性・法制度の質・政府の腐敗の少なさ・民営企業に対する銀行融資の活発さのいずれもが有意な影響を与えているが、それら諸要因間にも複雑な因果関係が存在する。それを解きほぐすと、法制度の質と民営企業に対する銀行融資の活発さが、因果関係の出発点即ち根本的な発展促進要因である。 第二に、上記の計量分析による知見に基づき、江蘇省・陝西省・湖北省(山間部)といった経済発展度の異なるフィールドを対象として、現地企業聞き取り調査がおこなわれた。市場の競争性・法制度の質・政府の腐敗・民営企業に対する正規金融からのサポートという、企業間信用発展要因間の関係を明らかにし、省レベル集計パネルデータを用いた計量分析を実体面から裏付けることができるかどうかが、この現地企業調査の焦点であった。そして概ね肯定的な結果を得ることができた。 第三に、中国企業大規模マイクロデータを用いて初歩的な計量分析をおこない、企業の資金調達源が、現金の前払いやその形式をとったインフォーマル金融から企業間信用金融への変化・発展していくことを一定程度跡付けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度には、概ね研究計画で予定したように、中国における企業間信用発達要因解明の中間段階としてマクロデータ(省レベル集計データ)を用いた本格的な計量分析をおこない、それに基づく現地企業調査を実施出来たため。また、企業レベルマイクロデータに用いた計量分析をおこなえた点でも研究計画を実際に進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査を継続しつつ、企業レベルマイクロデータを用いた本格的な計量分析による仮説の検証をおこなっていく。この仮説の構築には、これまでのものも含めた現地調査の成果とマクロデータによる計量分析の成果が活用される。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度秋に発生した日中間の領土問題による政治的緊張のため、現地調査が行いにくくなった部分がある。特にもともと政治的にセンシティブな地域である新彊ウイグル自治区における調査に大きな障害が生じ、実施することが出来なかった。当該地域での調査には、比較的多額の費用(旅費・滞在費)がかかるはずであったところを、その部分を他地域での調査で代替したため次年度使用額部分が発生した。 新彊ウイグル自治区での現地調査の困難性は次年度も変わらないと予想されるため、他の経済的後進地域(陝西省山間部、寧夏自治区等)での調査を充実させ、新彊ウイグル自治区については企業レベルマイクロデータ計量分析において特別な注意を払った考察をおこなう。
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