平成25年度科学研究費補助金の交付を受けた研究及び交付の全期間平成23~25年度期間において、我々は以下のような研究成果を得た。 まず過去2年間における主要な成果は以下二つであった。第一に、中国省レベル集計パネルデータを用いた計量分析の結果、次のような統計的事実が見出された。企業間信用の発達要因として、幾つかの要因が直接的影響力を持つが、それら諸要因間にも複雑な因果関係が存在する。それを解きほぐすと、法制度の質と民営企業に対する銀行融資の活発さが、因果関係の出発点である。第二に、現地調査及び企業マイクロデータを用いた計量分析により、後進地域では、政府の腐敗や法制度への低い信頼により信用取引が不活発であることが明らかになった。また、現金の前払いによる取引やインフォーマル金融のプレゼンスが大きい。時系列的にも、中国民営企業の資金調達源が、現金の前払いやその形式をとったインフォーマル金融から企業間信用金融への変化・発展していく。 平成25年度の研究においては、企業マイクロデータ計量分析により、企業間信用の発達に関連する諸要因の因果性について、マイクロレベルでのより精確な考察が試みられた。即ち、企業間信用の発達・法制度・市場の競争性・政府の腐敗・インフォーマル金融の間の関係が計量的に解明された。法制度の質の改善とインフォーマル金融の一定の発達が因果関係の出発点となっている。それらが、まず媒介項としての市場の競争性の高まりや政府の腐敗問題の軽減を生じさせる。そしてこの媒介項が最終的に企業間信用の発達とインフォーマル金融の衰退に結果するのである。企業間信用ファイナンスを発達させるには、法制度の質の改善という政策目標を達成することと、アイロニカルであるが企業間信用ファイナンスと競合関係にあるインフォーマル金融が先行して発達しているという前提条件が重要である、という実践的含意が導かれた。
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