研究課題/領域番号 |
23530316
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂出 健 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80272889)
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キーワード | フランス |
研究概要 |
航空機産業における国際産業政策調整の実態について解明する目的で以下のような、調査・研究活動および研究成果の公表を行った。(1)歴史的事例として、英仏政府間の超音速旅客機コンコルド計画をめぐる政府間関係を、イギリス国立公文書館での調査を行った。また、その研究成果を、欧州経営史学会(European Business History Association)年次大会(パリ)で報告した。この研究は、Kyoto Economic Reviewで掲載予定である。(2)近年の欧州での大手航空機企業の合併交渉を研究した。具体的には、独仏の合弁企業EADS社(欧州エアバスの親会社)とイギリスのBAEシステム社の2012年秋の合併交渉とその破綻の要因を分析した。その研究成果は、京都大学経済学部紀要『経済論叢』に、「EADS社-BAEシステム社合併交渉決裂と欧州産業基盤」として公表した。(3)前年に引き続き、日本政府の武器輸出三原則緩和について経済産業省へのヒアリングなどを通じて調査した。日本政府の次期戦闘機としての国際共同開発戦闘機F35導入により、アメリカ以外の諸国(含むイスラエル)への武器輸出の可能性について検討した。(4)1980年代のから2000年代にかけての、欧州エアバスへの欧州政府の輸出補助金とアメリカ政府の軍事調達を通じたボーイング社への「暗黙の産業政策」の相克について調査し、論文を執筆中である。(5)ボーイング787の発火トラブルについて検討し、同社のサプライ・チェーンへの日本の部品メーカー・素材メーカーの組み込まれ方の実態について調査を初めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歴史的研究については、英仏コンコルド共同開発へのイギリス・ウィルソン内閣の意志決定過程について調査を達成し、国際学会での発表、英文雑誌への研究成果の公表等の成果を収めた。 しかし、現代問題については、企業(東レ社、ボーイング・ジャパン社)・官庁(経済産業省)へのヒアリングを行ったが、企業機密・防衛上の機密に関わる調査となるため、難航した。 計画当初は、ボーイング社ウィチタ工場での工場見学・787等新鋭機のサプライ・チェーンについてのアメリカでのヒアリングを予定していたが、ボーイング社に打診したところ、断られ、当初の計画を断念し、予定より研究費の支出が少なくなり、未使用金が発生した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、三菱重工業のMRJ開発をめぐる状況についてヒアリングを進めたい。 また、国際産業政策調整についての先行研究となる戦略的通商政策をめぐる論調についてもサーベイを進めたい。また、前年度にイギリス国立公文書館で収集した史料のなかで、1970年代末のアメリカ・ボーイング社の7X7/7N7二重開発計画とこの計画へのイギリス政府のコミットメントを示す史料があるので、この史料をもとに、1980年代の米欧間の航空機産業開発をめぐる国際産業政策調整について改めて検討し、英語雑誌に投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度(次年度)では、以下のような、補充的な調査活動を行うとともに、研究成果を学術雑誌に投稿する予定である。(1)1970年代末のポーイング社の7X7/7N7二重開発計画とそれに対するイギリス政府・ロールスロイス社(航空機エンジン)・ブリティッシュエアウェイズ社(エアライン)・BAe社(機体メーカー)の異なる対応について検証し、英語雑誌に投稿する。そのための英文校閲に研究費を使用する。(2)これまで研究してきた、イギリス航空機産業の歴史的展開と国際産業政策調整の概観について、韓日ブリテン史学会で報告する。そのための旅費・英文校閲に研究費を使用する。(3)研究計画当初計画していたアメリカ・ボーイング社での現地ヒアリング・工場見学は、787旅客機燃焼トラブルのため、前年にまして困難になった。そのため、研究計画を修正し、航空機産業と並んで重要性を持つ原子力産業の国際産業政策調整について、核不拡散体制の形成を念頭に置きながら、英独蘭合弁ウレンコ社(濃縮ウラン会社)の創立と展開について検討し、欧州の軍事産業基盤の特質について検証し、研究成果を英文雑誌に投稿する。そのための英文校閲に、昨年度の未使用金を研究費として使用することととしたい。(4)欧州エアバス社に対する欧州政府の補助金支出をめぐる米欧WTO航空機摩擦について研究史、研究成果を公表する。そのための資料収集・ヒアリングに研究費を使用する。
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