研究目的にある、民間航空機産業におけるサプライヤー・システムについて、ボーイング社のB777/B787の生産過程における日本の生産パートナー三菱重工業(主翼等)・東レ(炭素素材)の役割を調査しようとし、ボーイング日本支社に、アメリカ・シアトル州のボーイング工場でのヒアリングを依頼した。ボーイング日本支社はボーイング・アメリカ本社にわたしのヒアリング・工場見学について打診したが、ボーイング・アメリカ本社は私の工場見学・ヒアリングを企業機密の保持の観点から断った。その後、GSユアサ(京都所在)が電池を納入しているB787の発火トラブルが発生し、B787の運航が停止されるなど、民間航空機産業における国際的サプライヤー・システムの調査は著しい困難に直面した。こうした状況で、私は、(1)GSユアサ(京都)の工場見学に参加し、ボーイング機の発火トラブルについて質問するとともに、(2)航空機産業の国際産業政策調整の近年の大きなトピックとして、EADS社(仏独合弁の航空機・航空宇宙メーカー、欧州エアバスの親会社)とBAEシステムズ(イギリスの航空機・航空宇宙メーカー)の合併交渉(との決裂の過程の要因)を、新聞・雑誌資料、各種報告書を素材に分析し、紀要に論文を発表した。(3)航空機とならび、私が先進国の防衛産業基盤(Defense Industrial Base)として重視しており、航空機産業の国際的再編とも深い関連のある原子力産業における国際産業政策調整の事例として核燃料会社ウレンコ社設立をめぐる、イギリス・西ドイツ・オランダの交渉過程を核不拡散レジームの成立史と関連させながら研究し、英語論文草稿を執筆した。
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