研究課題/領域番号 |
23530317
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鈴木 純 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (40283858)
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キーワード | 非営利組織 / 関係財 / ソーシャル・キャピタル |
研究概要 |
従来の非営利組織研究に対して、「社会関係と組織行動との関連」という新たな視点を導入することで、非営利組織研究と経済秩序論をつなぐ分析経路を基礎づけ、社会保障政策や地域政策などの具体的政策分析の議論に接続する体系的な分析枠組みの構築を目指す研究を行った。 具体的には、近年展開されつつある「関係財(relational goods)」という概念を非営利組織分析に組み入れ、それにより、従来の非営利組織研究に対して指摘されてきた分析上の諸問題を克服するとともに、社会における非営利組織の位置付け、および当該分野に関係する実証分析の理論的基礎を与えるための理論的基礎の可能性について検討した。今年度はとくに、前年度の研究結果から得られた具体的な問題の所在、非営利組織研究の課題にもとづいて、引き続き考察を進め、分析の改善を試みた。なかでも、関係財の理論とソーシャル・キャピタルの理論展開との関連について集中的に検討した。 また、内外の関連する学会に参加し、関連する諸分野の研究者との討論・意見交換を行い、上記の目的にとって有意義な情報を得ることができた。とくに、イタリア・シエナで開催されたISTR (The International Society for Third-Sector Research)の年次大会では、各国の先端的研究成果について議論する機会をもつことで、今後の本研究の方向性について重要な示唆を得ることができた。 また、本研究成果にもとづいて、サード・セクターあるいは非営利経済領域の経済政策論的位置づけについて、基礎的な方向を展望する研究に参加し、図書を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第1の目的である、非営利組織研究と経済秩序論をつなぐ分析経路の基礎づけについて、関係財理論とソーシャル・キャピタル研究との関連についての考察によって一定の進展が得られた。 また、非営利組織の関係財理論は、ソーシャル・キャピタル研究において指摘されてきたいくつかの理論的問題点を克服する可能性を持っていることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、非営利組織の関係財理論を中心にして、非営利組織研究あるいはサードセクター研究と経済秩序論をつなぐ分析経路の基礎づけを進めるとともに、社会保障政策や地域政策などの政策分析の議論に接続する体系的な分析枠組みの構築につながるような、具体的な含意の導出に努める。 そのため、関連研究領域の研究者たちとの議論のみではなく、当該経済領域において実際に組織運営・活動している方々や、自治体等の政策立案・実施にかかわる方々との交流・意見交換を積極的に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
非営利組織、サード・セクター、ソーシャル・キャピタル等に関連する研究は、近年多くの著作が発表されている。さらにそれらの関連研究は、社会疫学・教育学等の分野にも広がっている。本研究目的の視点から、それらの諸研究の成果を収集して整理することは、本研究の進展にとって不可欠である。 また、上記「推進方策」で述べたように、関連研究者や政策実施関係者との交流を行うことで、本研究を推進させるとともに、とその成果を社会的に還元する方法を探る。
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