本研究では、経済主体の持つ他主体との社会関係と経済行動との関連に着目することで、非営利組織研究と経済秩序論(とりわけ経済システムの多元性に関する研究)をつなぐ分析経路を基礎づけ、社会保障政策や地域政策などの具体的政策分析の議論に接続する体系的な分析枠組みの構築を目指す研究を行った。 具体的には、近年展開されつつある「関係財(relational goods)」という概念を非営利組織分析に組み入れ、それにより、従来の非営利組織研究に対して指摘されてきた分析上の諸問題を克服するとともに、社会における非営利組織の位置付け、および当該分野に関係する実証分析の理論的基礎を与えるための理論的基礎の可能性について検討した。 本研究のこれまでの成果を纏めた著書を昨年度末に刊行した以降、今年度中に新たな論文を刊行することができなかったが、前年度の研究結果から得られた具体的な問題の所在、非営利組織研究の課題にもとづいて、引き続き考察を進め、分析の改善を試みた。なかでも、関係財の理論と社会ネットワーク論の展開との関連について集中的に検討した。また、関連する学会において報告し、関連する諸分野の研究者との討論・意見交換を行い、上記の目的にとって有意義な情報を得ることができた。 その中で、社会学における非営利組織・社会ネットワーク論研究との共同研究の必要性と実現可能性を見いだした。そこで、本研究課題を再構成し「最終年度前年度」として基盤研究に応募したところ、研究費の交付を受けることが決定したため、新たな課題のもとで本研究で追求してきたテーマを展開させることになった。
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