研究課題/領域番号 |
23530323
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
塩原 俊彦 高知大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60325397)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ロシア / 中国 / 石炭 / 安全保障 / 腐敗 / ガスプロム |
研究概要 |
研究内容:ロシアと中国の石炭産業における統合形態の比較を行い、その問題点を検討した。これは、エネルギー安全保障の観点から、石炭産業という電力、鉄鋼、セメントといった基礎産業に深くかかわっている産業から、他の基礎産業を考えるための「準備」であった。他方で、とくにガスプロムというロシア最大のガス会社をめぐる経営や政治家との関係などについても、資料収集および分析を行った。研究意義:エネルギー安全保障を石油や天然ガスといった分野ではなく、石炭分野から考えることで、より広範な観点からエネルギー安全保障をとらえ直すことが可能になるという意義をもっている。ガスプロムの研究は、企業レベルの安全をどう保障するのかという問題であり、それが企業と政府の癒着や腐敗の問題として考える必要性を教えてくれている。研究の重要性:ロシアおよび中国の石炭産業の研究は稀少であり、それ自体、価値をもっている。ガスプロムは、ロシアの税収の2割を左右する大企業であり、国際パイプラインの敷設をめぐって国際的なポリティカルエコノミーともかかわっているから、その研究はロシアと中国の国際関係を考えるうえでも重要である。研究成果の公表:ロシアの石炭産業については、法政大学イノベーション研究センターのWorking Paperとして、2012年4月にも公表する。ロシアと中国の石炭産業の比較については、ロシアの学術誌Манеджмент и Бизнес-Администрированиеに2012年6月にも掲載されることになっている。ガスプロムについては、拙著『プーチン2.0』(2012年1月刊行)において詳しい内容を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、ロシアと中国との石炭産業の比較を23年度中に行うという、大きな課題はほぼクリアできた。ロシアの石炭産業は、ソ連崩壊後の過度の自由化の過程で、外資を利用したオフショア会社の活用によって、急速に統合化がはかられた。これに対して、中国は政府主導で、石炭部門の改革を漸進的に進めている。こうした改革の方向性の違いがエネルギー安全保障をめぐる石油や天然ガス部門の研究にいかすことが可能になると思われる。それだけの「準備」が整ったと言える。ガスプロムの研究も、今後のロシアと中国との安全保障問題を考えるための視角をあたえてくれた。他方、軍事関係資料の収集も順調に進んでおり、これを分析する作業を24年度に行うための下準備が整ったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
安全保障問題を、軍事だけでなく、エネルギー安全保障などの観点からも分析しているため、今年度も軍事とエネルギー問題の双方について研究を継続したい。とくに、中国の軍需産業について、詳しく調査する計画である。ロシアと中国を結ぶパイプライン敷設についても継続的に研究する。ロシアの国防産業と安全保障の問題については、日本企業が軍事技術の輸出緩和に伴って、大きな関心を寄せているため、こうした日本企業の関心にこたえるためにも研究を行う。他方、中国の国防産業については、中国の軍事費増強と呼応する形でどう変化しつつあるのかを研究する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の計画に基づく経費執行について、4月に支払いすべき経費が残っているため、次年度使用額が存在するように見えるが、実際には、全額を執行予定である。そのため、次年度の研究は、当初の計画通り進める予定である。前年度、中国出張ができなかった。できればこれを実現することが課題となる。ロシアについての研究では、ガスパイプラインの中国向け敷設をめぐる問題について、とくに深く研究する計画である。防衛産業については、2012年夏に、ロシアを中心にまとめ、論文を発表する予定だ。
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