研究課題/領域番号 |
23530324
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
P Ratnayake 佐賀大学, 経済学部, 教授 (90221697)
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キーワード | ソーシャルビジネス / 日本海外協力隊 / 農村開発 / キャパシティビルディング / 貧困軽減 / JICA / スリランカ / 経済自立 |
研究概要 |
平成24年度、『「ソーシャル・ビジネス」の展開と貧困削減~日本の技術協力に関する研究』について国内外で資料・実態調査(アンケート)を実施した。国内(日本)調査では、日本がスリランカの人々のキャパシティビルディングのためにこれまでどのように協力してきたのかについて資料調査を実施し、対アジアにおける能力開発をめぐる政策的分析を行った。国外(スリランカ)調査では、日本の技術協力、特に青年海外協力隊員の活動を通じたキャパシティビルディングを対象とした。育成されたスリランカの人々がどのような経済社会活動をしているのか、その研修は彼ら自身の生活改善にどの程度で貢献しているのか、隊員が設立した住民組織による市場中心の生産活動がどの程度で発展しているのかについてアンケート・聞取り・資料調査を実施した。本調査は青年協力隊員(村落開発普及員)の指導の下で実施された5つの「草の根技術協力事業」を対象とした。 本調査で明らかにしたこと次の通りである。農村の低所得者層、特に女性労働者が持つ伝統的な技術能力を「市場志向型の生産活動」に活用できたのは隊員の活動の貢献が極めて高いこと。隊員の活動を通じて促された近代的技術や教育、訓練、市場との結びつき、物的・金融的サポートなどの供給が、農村女性のキャパシィビルディングに重要な役割を果たしたこと。農村女性による市場向け生産活動がもたらした経済的・社会的影響は高いこと。特に、女性の社会的地位の向上、チームワークの改善、エンパワーメントの改善、生産・市場・経営ノウハウの向上、所得・貯金の増加、経済自立できるという自信、経済活動に参加する女性の増加、職業機会の拡大、社会保障の安定、農村外の様々な組織との関係の発展などが明らかとなった。しかし、農村の最貧層の女性しか参加しないこと、依存症候群の傾向、経営ノウハウの不足、市場の不安定などの問題も見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年間実施した同課題に関する国内外での資料・アンケート調査、5件のケーススタディで表出した残された課題、データ分析で明らかになったことについて補足的な調査を実施する計画である。そのことにより本研究課題についてさらに理解を深め、農村の経済的自立のために必要なプロジェクト実施の可能性について検討する。 国内調査:青年海外協力隊員が担当した5件のプロジェクトについて、帰国後に隊員が提出した報告書に関する資料調査を実施し、残された課題を明らかにする。その方法については、JICAの協力を受けながら資料調査を行う予定である。 国外調査:昨年の主な実態調査対象の5件のプロジェクトが、将来「ソーシャルビジネス組織」として実施できるか否かの可能性について調査し、検討する。特に、国内外市場を中心とした生産活動とそれに関する経営の長期的安定性の実現性について分析し、生産者が直面する主な課題について深く分析する。本年度は本研究の最終年であるため、過去3年間の研究成果を学術論文としてまとめ国内外の学会で発表し、学術論文として国内外の雑誌に出版する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費は主に以下の研究活動のために使用する計画をしている。 ① 国内外の調査で残されたことについて必要な限り補足調査を実施する。 ② 国内および海外の現地調査結果の検討および最終的な報告書取り纏めについての検討・確認作業を実施する。 ③ 海外共同研究者・協力者・日本の技術協援助担当者(JICA)を招聘して、佐賀大学で合同研究会/シンポジウムを開催する。 ④ 最後に、本研究の研究成果を学術論文として纏める。
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