研究課題
本研究で実施した資料・聴き取り・アンケート調査を通じて、貧困者層の「エンタイトルメント」の活用の場となる「ソーシャル・ビジネス」の発展が重要な鍵を握ることが証明された。貧困者層がソーシャル・ビジネスに確実に参加できるために、日本の「技術協力援助」、特に「草の根技術協力」援助が彼らの「キャパシティビルディング」に貢献している。平成23年度から平成25年度までの5つの「草の根技術協力事業」を対象とした実態調査で次のことが明らかになった。日本の「草の根技術協力」は、スリランカの低所得者層の能力開発に間接的に貢献している。また、日本の技術協力が将来のスリランカの農村レベルのソーシャル・ビジネスが実現できる「道」を構築しているだけでなく、持続的な貧困削減に多大な効果をもたらしている。次に、農村の低所得者層、特に女性労働者が持つ伝統的な技術能力を「市場志向型の生産活動」に活用できたのは青年海外隊員の活動の貢献が極めて高かったからである。隊員の活動を通じて提供された近代的技術や教育、訓練、市場との結びつき、物的・金融的サポートなどが、農村女性のキャパシィビルディングに重要な役割を果たしている。農村女性による市場向け生産活動がもたらした経済的・社会的影響は高い。特に、女性の社会的地位の向上、チームワークの改善、エンパワーメントの改善、生産・市場・経営ノウハウの向上、所得・貯金の増加、経済自立できるという自信、経済活動に参加する女性の増加、職業機会の拡大、社会保障の安定等が明らかとなった。しかし、農村の最貧層の女性しか参加しないこと、依存症候群の傾向、経営ノウハウの不足、市場の不安定などの問題も見られた。特に、隊員の帰国後のプロジェクトの持続的な自立経営が主な克服すべき課題である。
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Saga University Economic Review
巻: Vol. 47, No. 1, March ページ: 1-32
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