研究概要 |
1980年代以降の公企業の民営化の流れの中てで,公企業と民間企業が競合する市場(混合市場)の分析が進んできた。しかし,これまで分析対象は,財市場が中心であり,労働市場における賃金率や金融市場での利子率も含めた分析は多くない。そこで「企業行動の内生的手番」の考え方を,労働市場と金融市場も考慮して,混合寡占市場の分析に適用することを目的として研究を進めてきた。本年度は,東京,神戸,札幌,静岡,福岡,大分,フロリダ,釜山での学会,研究会参加,資料収集,研究打合せを通じて研究を進め,以下のようなことかが明らかになった。 (1)混合寡占市場の分析範囲を財市場での数量競争に限定した最適部分民営化比率を導出する手法を前年度に引き続き検討し,その結果を日本応用経済学会で報告するとともに,そこでの議論を基に,図解による直観的な説明も新たに検討し,有効な分析道具であることを確認でき,韓国経済通商学会および,フロリダ大学の研究会において報告した。 (2)労働市場での賃金決定の状況を考慮し,民間企業のみ報酬制度としてprofit sharing制度を採用している場合に,公企業が完全国有化と完全民営化している場合から,先行業績にしたがい部分民営化比率の追加的な変化に注目し,sharing パラメーターがある一定範囲の場合は,完全国有化も完全民営化もともに最適ではないことが確認された。すなわち,民間企業のみがprofit sharing制度を採用している場合に,部分民営化が最適となる可能性があることが確認された。 (3)上記(2)に関連し,profit sharing制度の企業とそうでない伝統的な利潤最大化企業野2つの民間企業により構成される複占市場の場合,賃金決定のタイミングについては,profit sharing制度の企業が先手,伝統的企業が後手となる場合があることが理論モデルにより確認された。
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