研究課題/領域番号 |
23530326
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
明石 芳彦 大阪市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (00150970)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 電子工業 / 電子部品 / 電子デバイス / 機能性化学 / ビジネスモデル |
研究概要 |
日本の電子工業において、電子部品・デバイスが工業の中心となっている。とくにマイコンの一部であるMCUは電子デバイスとして競争力が強いが、機械系部品だけでは発揮できない機能を制御し、機械系部品に組込まれたソフトウェアやプログラミング等は日本の電子機械製造企業にとり、製品の高機能化の要となっている。 電子部品の小型、薄型、軽量化が、電子デバイスや電子製品の小型、薄型、軽量化を基礎づけている。部品ならびに最終製品の小型・軽量化、薄型化の実現ならびに高機能を有する部材は、日本の顧客企業と「中堅規模の」部品・部材企業が共同して製品・技術開発を行った結果である。だが、その部材、部品供給企業は日本の顧客にも外国の顧客にもほぼ同じ機能を持つ部品・部材を供給しており、顧客企業は、少数の供給企業から類似機能を持つ部品・部材を購入しているので、主要製造企業の「最終」製品間にほとんど差異はなくなる。 世紀転換期をへて、日本企業の輸出依存型の事業の仕組み(ビジネスモデル)は、低価格競争や絶対的な低価格商品が支配的な市場に向ける比重が高まった。一方、海外売上高の比重が高いことは当該企業の利益率の上昇に必ずしも貢献しない点も明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去の研究や現地調査での知識をふまえて進めているため、電子工業の現況にさほど振り回されることなく、傾向的特徴をおおむね整理することができた。 一方、個別企業の研究等はあるものの、本研究のように産業レベルでの類似目的の研究が意外と少なく、研究の視点と理論との対応など、研究の方法論まで自ら考案していく必要があり、検討すべき事柄が多くなっている。
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今後の研究の推進方策 |
日本の電子工業の実態が過去の動向との対比で見ても、相当に速い速度で変化しているように思われる。アメリカ、欧州、アジアの関連企業、関連工業の中長期的動向をふまえて、日本電子工業の競争優位性の源泉や技術開発活動の特徴や課題を整理することが重要と考えている。 特に、現地訪問を経て、ベトナム、インドへの概況を知ることができたので、既存研究文献の内容を本研究の目的に引きつけてより正しく理解することができるようになった。こうした点も意識して、先行研究のレビューと検討課題の整理を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、理論的研究の面では、水平分業の概念を根本から検討し直す予定としている。この点は、第2次世界大戦以降のアメリカ企業の研究成果にまでさかのぼる必要があるかもしれないが、現在、鋭意、文献レビューを行っている。 アメリカ、欧州、アジアの関連企業、関連工業の変化が速いので、長い目で見て、技術開発、製品の競争優位性、新興国のニーズの関連性を具体的に分析していく。 また、新興国の競争力向上という現実により、20世紀に書かれた既存研究の一部は妥当性が少なくなったものも散見される。競争の源泉要因が変化している面も感じるので、事実に基づいて検討する基本を維持する上でも、現地調査や企業訪問を繰り返す必要がある。
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