・水平分業の定義・概念として、第1に、販売市場における製品差別化ならびに市場の細分化(セグメンテーション)が進めば、低価格品と相対的に高い価格の製品との販売市場での棲み分けが可能であるという視点、第2に、ある製品を製造するための材料から部品への加工、部品から中間品製造や製品組立への流れと、ある製品の設計、開発、製造という生産工程機能の中での分業関係、つまり、価格帯や用途差に基づく販売市場での棲み分けという視点と、製品・部品別の分業生産関係という視点から捉えることができる。前者の意味での水平分業がうまく進む条件とは、①製品市場がセグメントされ、市場での棲み分け関係が成立し、②委託・受託企業の双方が「異なる」技術次元での強みを持つこと(組立工程の一部で技能労働や技術ノウハウを要する、組立工程で摺り合わせ作業を伴う)などである。日本の電子工業製品メーカーは上記の条件を満たすことができず、日本企業の個別最終製品別世界市場シェアは2000代半ば以降、大幅に低下した。 ・提携相手の選択は、ビジネスモデルの選択でもある。世界的次元での水平分業の大半は下請発注の発想による同業者へのOEMであり、結局のところ、低価格競争に対応する性格が強い。日本の電子系企業の競争力回復には、生産体制やビジネスモデルの選択だけでなく、顧客の観点から見て魅力ある製品の開発が要であろう。「割安感」の検討に値する「製品の魅力」を持つことが重要だと捉えた。希望価格で製品が売れるためには、自社製品を販売できる製品市場セグメント化を導く差別化要素が欠かせない。標準品以外の製品では、顧客が支払い価値を考慮するような固有の特徴を持ち、他社が直ちには追随・模倣できない要素を持つことが重要である。
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