研究課題/領域番号 |
23530327
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
野田 知彦 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (30258321)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 雇用システム / 経営者の属性 / ファミリー企業 |
研究概要 |
本研究では、所有と経営が完全には分離していないファミリー企業と、完全に分離している経営者支配企業の間で、雇用システムや雇用調整行動、労使関係そして経営者交代大きな差がみられるかどうかを分析し、経営者の属性によって生じる企業統治構造の違いが雇用システムに与える影響を研究する。この目的を達成するために、今年度は以下の二つの課題に取り組んだ。第一に、本稿ではガバナンスの1つの形態として同族企業を取り上げることにより、同族企業が労働組合の形成にどのような影響を与えるかを検証し、企業ガバナンスと労働組合の関係を明らかにした、中小企業の個票データを使用して、同族企業では労働組合の存在が抑制される、同族企業では経営者は労働組合のもつ正の効果より負の効果を重視しているという2つの仮説を顕彰した。計量分析の結果、2つの仮説が支持されることを示している。つまり、経営者の属性の違いが労働組合に対する評価の違いを生み、労使関係の違いを生み出すことが明らかにされた。第二に、上場企業のデータを用いて、内部出身役員の雇用調整に対する影響が、経営者の属性によって異なるかどうかを分析した。内部から昇進した役員は、従業員の雇用守る行動をとることが知られているが、その内部出身役員の雇用調整に対する効果が、経営トップ属性によって異なるのかどうかを検証した。得られた結果としては、内部出身者が経営トップの企業では、内部出身役員は赤字になるまで希望退職の実施を抑制する効果を持つが、ファミリー企業ではそのようなことが見られないことが明らかとなった。取締役会が従業員の雇用保障を重視する政策をとるか否かは経営トップの属性に影響をうけることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大企業、中小企業それぞれについて、創業者とその一族か、従業員出身者かという経営者の属性の違いが、労使関係や企業の雇用政策に大きな影響を与えていることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後上記のの二つの研究課題を論文まとめ、いくつかの学会、セミナーで報告するとともに、国内外のジャーナルへの投稿を目指す。さらに、労働組合の雇用調整に対する効果が、経営者の属性によって異なるのかどうかという問題と、経営者の属性によって賃金、昇進システムなどの人的資源管理施策に違いが生まれるのかどうかという問題を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の課題を遂行するために、学会出張旅費が必要となる。また、論文を海外のジャーナルに投稿するために英文校正が必要となる。最後に、新たな研究課題推進のために、新たなデータセットの作成が必要となり、このための人件費が必要とされる。
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