研究課題/領域番号 |
23530327
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
野田 知彦 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (30258321)
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キーワード | 企業統治 |
研究概要 |
本年度は、第1に同族(ファミリー)企業では人事・労務管理制度が制度として存在しない傾向にあり、第2に同族企業と非同族企業では人事・労務管理制度が離職率を下げる効果に違いがあるという仮説を労働政策研究・研修機構が2005年度に行った中小企業のアンケートデータを使用して検証した。その結果、第1に、企業規模や存続年数といった変数でコントロールすると、同族企業と非同族企業では賞与制度と勤務延長・再雇用制度は同族企業と非同族企業では有意な差が存在しないが、それ以外の人事・労務管理制度は非同族企業の方が存在する傾向が観察される。第2に、中小企業のなかでも売上高10億円以上、または従業員数100人以上の非同族企業においては、離職率を下げる人事・労務管理制度は定期昇給制度と評価者訓練であるが、同族企業ではこれらの制度が離職率を下げる効果を持っていない。第3に、売上高10億円以上、または従業員数100人以上の非同族企業では労働組合や従業員組織の存在が離職率を低下させるが、同族企業ではこのような効果は観察されない。第4に、売上高が10億円未満、または従業員数100人未満の同族企業では賞与制度や勤務延長・再雇用制度が存在すると離職率を低下する。第6に、従業員数と離職率の負の関係については、人事・労務管理制度などでコントロールするとこの効果は消える。 これらの結果から、同じ中小企業であっても、同族企業と非同族企業では人事・労務管理制度の整備やこれらの制度がもたらす機能が異なる可能性が示される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国内のレベルの高い学術誌に投稿し採用された
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今後の研究の推進方策 |
さらに、中小企業のデータを使用して、計量経済学的な問題をクリアーした論文の作成を目指すとともに、上場企業データによる分析を目指す
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は中小企業のデータによる分析に加えて、上場企業データの整備と分析のために前年以上の人件費、謝金が必要である。また必要な知識を得るため、および研究成果発表のための出張旅費も前年を超える額が必要である。
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