昨年度から、取り組んでいた論文を改訂し投稿したところ、『国民経済雑誌』第213巻 第5号(平成28年5月号)に掲載が決定した。この論文では、中小企業のデータを用いて、同族企業や長期政権企業では終身雇用制度や年功序列型賃金が存在しない傾向にあり、また同族企業や長期政権企業の経営者は労働組合が雇用戦略に対して干渉することを忌避するため、労働組合があっても終身雇用制度や年功序列型賃金が存在するとは限らないという仮説を検証した。 分析の結果、同族企業や長期政権企業では終身雇用制度が存在しない傾向が確認された。また、非同族企業では労働組合があると終身雇用制度が存在する傾向が確認されたが、同族企業ではこの効果は確認されなかった。また、年功序列型賃金については、同族企業では存在しない傾向にあることが示された。分析の結果、ガバナンス構造の違いによって、企業内の雇用システムが異なっていることが明らかにされた。
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