研究課題/領域番号 |
23530328
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
菅 万理 兵庫県立大学, 経済学部, 准教授 (80437433)
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研究分担者 |
玉田 桂子 福岡大学, 経済学部, 教授 (80389337)
梶谷 真也 明星大学, 経済学部, 准教授 (60510807)
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キーワード | 時間配分 / 人的資本 / 健康資本 / 所得格差 / 教育 / 失業 / 生活習慣 |
研究概要 |
本研究の目的は、若年層における就業状態や人的資本・所得、健康資本の格差について、その原因と帰結を、個人特性、時間配分、教育・訓練制度に注目し、マイクロデータを用いて明らかにすることである。本研究は主として、(1)個人特性や従業上の地位が生活習慣や時間配分に及ぼす効果に関する研究 (2) 個人の時間配分が所得・健康資本に与える影響に関する研究 (3)教育制度と学力の格差に関する研究、から構成される。 当該年度は、(1)については、失業が個人の健康や生活習慣に与える効果についての分析を精査した。パネル分析より、失業は主観的な健康観に影響を与えないが、メンタルヘルス、運動習慣、睡眠時間に影響を与えることを確認した。また、人的資本が時間配分に与える影響について、フルタイムで働く女性の通勤時間について分析を行った。その結果、低賃金の女性は自宅近くで職探しを行うため通勤時間が短くなり、高賃金の女性も余暇時間を確保するため通勤時間を短くしていることが明らかになった。中程度の賃金の女性は郊外に住んで都心に通勤するため、通勤時間が長くなることが示された。 (2)については、『社会生活基本調査』の匿名データを用いて、余暇時間の使い方の変化を分析した。1個人の1日目と2日目の生活時間の変化を用いて個人効果を取り除いた推定を行った結果、1)休日において睡眠時間が年々増加していること、2)休日のテレビ視聴等の時間が年々減少していること、3)休日のスポーツ時間は平日と比べて長いが、その長さは年々減少していること、が暫定的に示された。 (3)については、IEA国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の 個票データを用い、勉強時間などの個人の時間の使い方の成績への影響を分析した。先行研究で使用された2003 年・2007年のデータに加え、2013年に公表された2011年のデータを使った分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それぞれの研究代表者・研究分担者は計画に沿って各自の担当テーマに関する研究を進めており、研究の進捗状況はおおむね順調である。具体的には、菅は従業上の地位変化が生活習慣や時間配分に及ぼす効果に関する研究を昨年度より継続して行っており、当該年度は研究成果の海外学会での報告、及び査読付き雑誌への投稿を行った。梶谷は個人の時間配分が所得・健康資本に与える影響に関する研究―特に個人の時間配分が所得に与える影響についての研究を、統計センターより提供された『匿名データ』を用いて進めている。玉田は個人の時間配分が教育・余暇に与える影響を、国際的な公開マイクロデータTIMSSを用いて進めている一方、人的資本が時間配分に与える影響についての論文を査読付き雑誌に投稿し、アクセプトされた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きそれぞれの研究代表者・研究分担者は当初の計画に沿って担当テーマに関する研究を進めていく。事業最終年度に当たる次年度は、データを共有し、共著の体制をとることで集中して研究分析を進めていく。 具体的には、『社会生活基本調査』の1991年・1996年・2001年・2006年の「匿名データ」を共通のデータとして、(1)個人の特性や従業上の地位が生活習慣や時間配分に及ぼす効果に関する研究と、(2) 個人の時間配分が所得・健康資本に与える影響に関する研究、特に「生活時間の使い方と所得との関係」についての研究を進展させる。(3)についてはTIMSSの個票データを用いて、個人の時間配分が成績に与える影響についての分析をさらに精緻化して進める。年度を通し、研究成果を研究論文としてまとめると同時に学会報告、査読付き雑誌への投稿などを積極的に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
事業最終年度に当たる次年度は、研究成果を国内外の学会や研究会で報告するための旅費、英文論文の校閲謝金や論文投稿料などに、重点的に研究費を使用する予定である。
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