研究概要 |
今年度は日本の銀行合併が銀行の株価とパフォーマンスに与える影響を分析した。このトピックは欧米の銀行合併では多く研究されているが (DeYoung, Evanoff, and Molyneux, 2009)、日本の銀行合併では Harada and Ito (2011)、Hosono, Sakai, and Tsuru (2009)、Yamori, Harimaya, and Kondo (2003) があるのみであり、特に株価への影響分析はほとんどない。今年度はこのトピックを、特に1990年代後半の金融規制緩和以降に焦点を当てて分析した。日本でも欧米でも金融危機の後に大規模な銀行合併が起こっており、その影響について知ることは学術上・政策上大きな意義がある。 今年度の研究では株価・パフォーマンスともに合併後の銀行の資産規模が大きく関わっていることが分かった。合併後に資産規模80兆円を超えるメガバンクの場合、合併の発表前後で株価は大きく上昇した。特に合併の発表前1か月の間に上昇が大きかった。一方合併後の資産規模が小さい場合、株価への影響はみられず、欧米の銀行合併と違い存続銀行と非存続銀行との間にも大きな違いは見られなかった。また合併後のパフォーマンスも合併後に資産規模80兆円を超えるメガバンクの場合に大きな影響が見られた。メガバンクはほかの銀行と比べて合併後に流動性資産の比率が上昇し、総資産に占める貸出金の比率が低下したが、収益率はあまり変わらなかった。合併前の資本金比率や銀行の種類なども影響したが、一番の要因は合併後の資産規模だった。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は日本の銀行合併の借り手企業への影響分析に移り、結果を国内外の学会で発表していく予定である (Nippon Finance Association, Japan Economic Association, Asia-Pacific Economic Association, Liberal Arts Macro Workshop, Eastern Economic Association and American Economic Association)。今年度の研究成果である銀行自身への影響分析は次年度の借り手企業への影響分析により補完されるはずである。
|