研究課題/領域番号 |
23530335
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
安達 祐子 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90449083)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ロシア / コーポレート・ガバナンス / 資源産業 / ロシア企業 |
研究概要 |
本研究は、現代ロシアにおける政府-企業間関係について、石油・ガスなどの資源産業を中心に分析することにある。ロシア政府による資源産業への関与政策は、日本をはじめ国際社会にとっては、資源大国ロシアの石油・天然ガス輸出体制を把握するうえで重要な問題であろう。そこで本研究では、ロシアの産業・エネルギー政策に関する意思決定過程、および企業経営やコーポレート・ガバナンスにおける政府の関与に注目した検討を行い、資源産業における大手企業の活動に対する政府の影響力を中心に、ロシアにおける国家と企業の関係のあり方を総合的に考察することを意図としたものである。 平成23年度においては、産業・エネルギー政策に関する政策形成過程を中心に研究をすすめた。具体的には、「戦略産業法」とよばれる、資源産業など国家によって指定された戦略分野への外資参入を制限する法の動向について資料収集・分析を重点的に行った。現地調査と文献調査とを総合的に組み合わせることによって調査を進めた。さらに、資源をはじめ戦略分野における企業・国家間関係のあり方について、ロシアの大手企業の活動を中心にモスクワとロシア極東のウラジオストクにて現地調査・聞き取り調査をおこなった。戦略産業法については、同法制定過程や改正過程で生じた様々な課題が明らかになったとともに、資源産業における政府系企業のガバナンスをはじめ投資環境全般においてロシアが直面する問題などもさらに深く理解することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究実施計画での主要課題は、ロシアにおける産業・エネルギー政策に関する政策決定過程を中心に検討を行うことであった。この点に関しては、おおむね順調に進展している。特に、「戦略産業法」に関し、地下資源開発や冶金分野・原子力産業などの42分野が「戦略的分野」として指定された背景や、法案成立までに意見対立のあったイシューについて資料を収集し、分析をすることができた。また、エネルギー省、経済発展省、天然資源環境省などの関係省庁や企業の情報なども収集し、分析することができた。今回、新たに法律の改正の動きが複雑に展開していることもわかったので、引き続き検討と分析を重ねていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた産業・エネルギー政策決定過程の検討結果をふまえ、今後の研究の推進方策としては、企業に対する国家の影響について、政府系企業の企業活動への政府の影響力と、政府系企業の政策形成への影響力について、特に天然ガスの生産・供給において世界最大の企業であるガスプロムと、国営石油最大手のロスネフチに焦点を当てて検討する。そこで、企業のガバナンス体制の分析、経営戦略の組み立て方や有効性、国有企業の戦略と国の政策との整合性、経営陣と政権との関係や、政府の企業統制における公式的介入および非公式的介入メカニズムに関する検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ロシアでの現地調査(インタビュー調査・資料収集を中心に)を行う。調査結果の取りまとめをし、国内研究会にて報告する。また、11月下旬に米国で開催される世界規模の旧ソ連圏中東欧研究の学会であるASEEES(Association for Slavic, East European, and Eurasian Studiesスラブ東欧ユーラシア学会、AAASSから改称)年次大会におけるパネルを組織し、発表を行う。
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