本研究では、異なる賃借権保護の状況を前提として、居住者の住居の選択(持ち家か賃貸住宅か)の問題を考えた。家主は既存住宅の品質について知っているが、居住者には分からず、居住者の居住期間について、居住者本人は知っているが、家主は知らないというという状況を前提に分析した。このとき、賃借権の保護が強いと既存住宅(中古住宅)市場はほとんど取引がなされなくなり、逆に賃借権の保護がない場合には、既存住宅市場で取引が実施されるようになることが示される。これらの結果が得られるのは、住宅に特有な投資機会の保護と住宅の品質についての情報格差の関係に法制度が影響を与えるからである。
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