研究課題/領域番号 |
23530340
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
湧口 清隆 相模女子大学, 人間社会学部, 教授 (00386898)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 経済政策 / 航空管制 / 電気通信 / 無線周波数 / 制度論 |
研究概要 |
本研究は、無線通信及び航空管制分野を例に、希少な公共資源の利用技術に技術革新が生じる場合に、政府の資源配分制度はどのように変化するのか、あるいは変化すべきかを、公共経済学のアプローチから考察することを目的としている。公共資源の管理費用の存在に着目し、資源配分方法と利用料(課金制度)との関係、利用料体系の背後にある考え方、資源利用技術の変化と配分制度の変遷を明らかにする。 1年目の平成23年度は、その第1段階として、関係当局のウェブサイトを用い、主要国・地域の周波数割当制度(周波数オークション・二次取引制度の導入時期、免許不要局等)、電波利用料制度、航空管制システム及び航空機への課金制度(上空通過料・管制料の体系)を調査した。英語での情報提供がない機関も多いことから、ICAO、IATA等の国際機関が発行する有料刊行物(精算上、費用は24年度計上)も利用した。現行の制度に関する情報の7割程度を入手できた。 電波監理制度については、International Telecommunications Society(ITS)のアジア太平洋地域大会(台北、6月)及びITSアジア・オセアニア・アフリカ地域大会(パース、11月)に参加して電波利用技術と周波数への価値付けに関する理論モデル構築のためのアプローチについて報告するとともに、政府関係者や有識者と情報交換し、本研究に必要な情報入手方法や研究方針に関してアドバイスを得た。しかし、授業期間中の出張であったため、関係機関への訪問の時間はとれず、ヒアリングは24年度に実施することにした。一方、航空管制制度については、ICAOの長谷川通氏に電話及びメールで問合せを行い、過去の制度に関する情報の入手方法を確認できた。 また、研究成果を評価してもらう観点から、3月に鬼木甫大阪大学名誉教授を大学に招き、公開ディスカッションの形式で講評を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
周波数割当て方法や及び航空機への課金制度について、現行の制度に関する情報はかなり入手することができたが、変遷に関する情報の入手が遅れている。特に航空機への課金制度に関する過去の情報はIATAやICAOが保有する情報で四半世紀以上遡れることは確認できたが、現在販売しておらず内部情報としてストックされているために、これらの機関へのヒアリングや、調査対象国(約10か国)の各年情報に関する複写要請が必要である。尤も、仮に販売されているとしても必要な部分は各年のデータ・ベース全体の5%以下と少なく、費用効率が悪い。これにかかわる出張が学科長業務との兼ね合いで23年度中にできなかったことからやや遅れている。ただし、このような遅れは想定内のことで、当初計画においても情報収集は24年度にもわたると計画していたために、研究全体を見通した際に大きな遅れとは考えていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に収集しきれなかった各国・地域の周波数割当制度、電波利用料制度、航空管制システム及び航空機への課金制度についての情報収集を行う。ICAO又はIATAに加え、政省令を国内もしくはウェブで検索することができないいくつかの国の電波監理機関、研究所等へのヒアリングを実施する。 また、効率的な情報入手を図るため、11月にはITSの世界大会(タイ)に参加し、研究発表と同時に各国の規制機関関係者と情報交換を行う。平成23年度にITS地域大会で報告した研究を1本の論文にまとめ、英文専門誌に投稿する。さらに、電波及び空域の各分野において情報が集まった国から、課金体系及びその変遷の分析を始め、割当制度と料金制度との関係性を明らかにする。R. Coaseの「経済学のなかの燈台」を参考に、制度変遷とその背景にある考え方の変化を分析し、日本語での論文化を行い、学会誌等に発表する。 年度末には、平成23年度と同様、電波政策もしくは航空政策の大家の研究者を大学に招き、ディスカッション方式で研究成果や方向性について講評してもらう。
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次年度の研究費の使用計画 |
費用効率性を高めるために、ウェブ調査や電話での調査を終了してから、必要不可欠な情報を国際機関が有料で発行するデータベースの購入を行うことにしたことから、ICAO、IATAが発行する航空管制料金に関するデータベースの購入が24年2月末となり、精算が24年度に繰り越された。また、計画段階では各国政府機関関係者へのヒアリングも兼ねて、23年7月にAir Transportation Research Society(ATRS)の国際大会に参加することを意図していたが、授業への影響を考慮して出張を見合わせた。それに代わるヒアリング調査を24年夏季休暇中に実施する予定である。 これら23年度の未支出分を踏まえて、24年度には欧州及び米州、必要に応じて豪州への調査目的で出張することから、そのための海外出張旅費に加え、ヒアリングに合わせて資料の複写、購入等を行うための文献購入費を見積もっている。 また、11月にタイで開催されるITSの世界大会の参加費、旅費に加え、英文予稿、英文論文を作成するためにネイティブ・チェックをかける費用が発生する。 さらに、年度末に研究講評のための公開ディスカッションを計画していることから、講評を行う先生(鬼木甫大阪大学名誉教授又は/及び山内弘隆一橋大学教授を予定)への謝礼、アルバイト代を見込んでいる。
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