研究課題/領域番号 |
23530340
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
湧口 清隆 相模女子大学, 人間社会学部, 教授 (00386898)
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キーワード | 無線周波数 / 航空管制 / 制度論 / 経済政策 |
研究概要 |
本研究は、無線通信及び航空管制分野を具体例に、希少な公共資源の利用技術において技術革新が生じる場合に政府の資源配分制度はどのように変化するのかを、公共経済学のアプローチから考察することを目的とする。公共資源の管理のために政府に費用が発生することに着目し、資源配分方法と利用料(課金制度)との関係、各国における現行の利用料体系の背景にある思想、資源利用技術の物理的・経済的特徴、技術の変化と配分制度の変遷を明らかにする。そのうえで、資源利用者による費用負担、「ただ乗り」問題回避などの観点から、技術変化に伴って望ましい制度はどうあるべきかを論ずる。 平成25年度には、前年度にITS世界大会で実施した報告を元に執筆した論文"Theoretical Analysis of Mobile Operators' Spectrum Strategies"を"Communications & Strategies"誌に投稿し掲載された(No.90, 2nd quarter 2013, pp.63-76)。本論文は、通信企業が自然な状況において、端末の高性能化に投資し周波数節約型技術を採用するのか、周波数に投資し広帯域の使用を図ろうとするのかを、理論的に考察したものであり、周波数配分政策を検討するための基礎となる。この論文を踏まえ、ITS地域大会で周波数の価値がどのように決定されるのかを分析した"Option Value of Future Spectrum Use"を発表した。また、前年度にICAOを訪問して収集した航空管制料のデータを整理し、その変化の要因を分析した研究"Technological Evolution and Transition of Charging Systems in the Air Traffic Control"をATRS世界大会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無線周波数分野、航空管制分野双方において、入手した情報を整理し、分析する段階に入っていることから、ほぼ当初計画どおりと言える。一方、海外での学会報告や論文化に時間をとられたことから、情報通信学会大会において報告は実施したものの、国内専門家による研究評価をじっくりと受けるような討論会を開催することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究最終年であることから、無線周波数、航空管制とバラバラに進めてきた研究を統合し、希少な公共資源全般に関して、利用技術の技術革新と政府の資源配分制度の変遷を一般化するように研究をまとめていく方針である。また、平成25年度における政策・研究動向として、第5世代移動通信(5G)における電波利用のあり方が重要視されるようになったことから、最新動向を調査し、政策的示唆を明らかにしたい。さらに、研究成果の社会還元に努める観点から、平成27年早春に専門家を大学に招いて研究成果を評価してもらう討論の場を設けたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
新たな通信技術の動向を調査するために海外現地調査を予定していたが、実施せずに終わってしまった。また、IATA、ICAOのATC chargesに関するデータ集も逐次情報が必要ではないために購入しなかった(当初、紙媒体を想定し物品費に計上していたが、サービス提供が電子媒体のみとなり「その他」に費目が変わっている)。本来有料で入手せざるを得なかった論文に関し、学術誌の外国論文研究会の委員になっているために無料で入手できたことが費用節約につながった。 今年度も国際学会(ATRS)報告を1回実施するほか、第5世代移動通信技術動向や最新の電波政策に関する海外調査を行う。また、最終年度につき、国内の専門家を大学に招いて私の研究成果の総括を評価してもらう報告会の実施も行う予定である。今年度の当初割当額は低かったことから、繰越金を使うことにより、これらの経費に充当することが可能である。
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