本研究は、無線通信及び航空管制分野を具体例に、希少な公共資源の利用技術において技術革新が生じる場合に、政府の資源配分制度はどのように変化するのか、すべきなのかを、公共経済学のアプローチから考察することを目的としている。 公共資源の管理のために政府に費用が発生することに着目し、資源配分方法と利用料との関係、各国における現行の利用料体系の背景にある思想、資源利用技術の物理的・経済的特徴、技術の変化と配分制度の変遷を明らかにしてきた。そのうえで、資源利用者による費用負担、「ただ乗り」問題回避などの観点から、技術変化に伴って望ましい制度はどうあるべきかを論じた。 無線通信では、電波利用が増加するにつれ、配分方法は先願主義から比較審査、抽選制、オークション制へと変化し、利用周波数の狭帯域化が進んだが、現在、高容量の無線通信需要の高まりを背景に、周波数拡散技術やセンシング技術、MIMO技術、キャリアアグリゲーション技術などが開発されるに至り、狭帯域化から周波数共用による広帯域化利用に変化しつつある。わが国では周波数オークション導入が今なお叫ばれているが、欧州では利用料を適切に課金することにより周波数共用を進めるべく、制度設計に向けた動きが見られる。 また、航空管制分野では、地上の航行援助施設を結んだ航空路の利用から衛星による広域航法(RNAV)に変わりつつある。従来、自国空港への離着陸を前提とした管制料制度が採用してきたが、航空機の性能が向上し、上空通過にとどまる傾向が強まる中で、航空機重量をベースとした課金体系から航行距離など受益に応じた課金体系に変化してきた。 本研究では、このような資源利用面での変化と技術革新とを結びつけ、公共資源の利用や公共サービスの利用にかかる適切な費用負担のあり方を検討してきた。最後に応用例として最近話題の「ドローン」を例に適切な規制枠組みを考察した。
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