研究課題/領域番号 |
23530341
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
山本 雄吾 名城大学, 経済学部, 教授 (20295158)
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研究分担者 |
森田 優己 桜花学園大学, 学芸学部, 教授 (50231642)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 交通政策 |
研究概要 |
本研究の目的は、わが国の道路旅客運送事業について、現行の政策(制度)と実態との齟齬から生じている諸問題を把握し、かかる諸問題の解消に資する今後の望ましい道路旅客運送政策を提示することである。 平成23年度は、既存文献のレビューおよび国内バス事業者へのヒアリング等から、以下の2つの問題を明らかにした。第1の問題は、わが国の営業バス事業は、規制制度上、乗合と貸切に区分されるが、営利事業として運営可能でかつ代替交通機関があり市場競争が存在する都市間バスと、多くの場合営利事業としては運営が困難でかつ地域にとって唯一の公共交通である域内バスという、市場も目的も異なる2つのサービスが乗合という1つの規制・政策区分に置かれていることである。第2の問題は、規制区分上は貸切バスであるツアーバスが、乗合バス(都市間バス)と事実上同じサービスを提供し、都市間バス市場において乗合バスと貸切バスの競争が生じているが、両者に対する規制の相違から公正な競争とはなっていないことである。 ここで英国の規制制度をみると、既存文献のレビューおよび英国交通省ならびに英国バス事業者へのヒアリング等から、以下の事実が明らかとなった。すなわち、英国では乗合と貸切の区分がなく、域内バスとそれ以外の区分である。そして域内バスでは、サービスの維持についての公的関与が見られるが、それ以外(都市間バスおよび貸切バス)については、基本的に市場競争に委ねられている。そして、いっそうの競争促進のために、バスターミナルについてはイコール・アクセスが規定されている。 以上の研究より、わが国においても、域内バスと都市間バスを規制制度上区分し、それぞれに相応しい施策を実施すること、すなわち、域内バスについては公的な調整の強化、都市間バスには規制緩和による競争促進を図ることが望ましいという結論を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
英国でのヒアリング調査および文献収集から、営業バスの事業区分および規制政策について、これまでわが国では紹介されていない、そしてわが国の今後の制度改革を考える上で有用な新しい知見を得ることができた。また、この研究成果を「バス事業規制区分のあり方-英国の規制区分を踏まえて-」として纏めた(学術雑誌に投稿し平成24年2月1日受理、平成24年4月10日現在査読中)。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、現在の道路旅客運送事業について、その実態と現行の道路旅客運送政策(制度)の齟齬に起因する問題・矛盾の把握をさらに進めるため、前年度の事業者サイドからの考察に加え、中央省庁および地方自治体に対するヒアリング調査を行い、行政サイドからの考察を行う。 さらに、比較対象および先行事例となる欧州諸国における現状把握を進めるため、前年度の事業者サイドからの考察に加え、英国等の地方自治体(交通政策部局)等に対するヒアリング調査を行い、行政サイドからの考察を行う。また、これとあわせて、23年度海外調査の補強のため、英国等のバス事業者に対するヒアリングも予定している。 平成25年度は、前年度までの研究成果を踏まえ、本研究の成果として、現行の規制区分の変更の提言等を含む、今後の望ましい道路旅客運送政策のあり方を提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主たる研究経費は、国内外のバス事業者および行政機関へのヒアリング調査費である。このため、外国旅費(欧州)として、研究代表者、研究分担者および研究協力者の計3名分、10日間程度の旅費・宿泊費等を計上した。国内旅費としては、研究代表者、研究分担者および研究協力者の計3名分、3日程度の旅費・宿泊費等を計上した。なお、海外調査に関連して、1日×2回分(または半日×4回分)の通訳費を計上している。 平成23年度配分額中130千円が平成24年度使用額となっているが、これは主として円高のため平成23年度の海外調査にかかわる旅費等が当初見積もりより圧縮されたためである。これは、平成24年度の海外調査の充実のために使用する予定である。
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