本研究の目的は、わが国の道路旅客運送事業について、現行の政策(制度)と実態の齟齬から生じている諸問題を把握し、かかる諸問題の解消に資する今後の望ましい道路旅客運送政策を提示することである。 平成23年度は、既存文献のレビューおよび国内外のバス事業者・行政機関等へのヒアリングから、現行では市場の特性がまったく異なるにも関わらず同じ規制制度下にある域内バスと都市間バスを規制制度上区分し、それぞれに相応しい施策を実施すること、すなわち、①域内バスについては公的な調整の強化、②都市間バスについては規制緩和による競争促進を図ることが望ましいという結論を得た。 平成24年度は、上記①および②の結論を、現実にわが国で実施するための具体的方策や障害について検討した。とくに②について、バスターミナル・停留所へのイコールアクセスの確保、すなわち新規参入者が既存事業者と同じ条件の下でバスターミナル・停留所を利用できるようにすることが、都市間バスの競争促進にとって必要不可欠であるとの結論を得た。 平成25年度も引き続き、上記①および②の結論を、現実にわが国で実施するための具体的方策や障害について検討した。とくに①について、大半が民営であるわが国のバス事業に対して公的な調整を実施するためには、強制的な規制強化ではなく、英国で導入されているQPS(Quality Partnership Scheme:行政とバス事業者の間の品質協定)が有力な手段となりうるとの結論を得た。
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