「キャリア教育」は、若者の安定的な就業を促すことを目指して推進されてきた。しかしながら、未だ方法論が確立されておらず、教育現場の実情に合わせて様々に解釈され、運用された結果、期待しただけの効果が得られず、弊害さえ生じていることが懸念されている。そこで本研究では、就職に直面している高校、大学・短大を「キャリア教育」の実施段階として個別に対象とし、正課教育・課外活動・就職支援と関連づけてその実態を把握しながら、卒業後のキャリア形成過程における状況を評価することを通じて、あり得べき姿を模索することを目的としている。 最終年度である本年度も、過年度と同様、高校教育における「キャリア教育」の実践に協力することを通じて、新たな事例を4件ほど収集することができた。特に、普通科高校のみならず、工業高校、商業高校という専門高校の事例を入手できたのは有意義であった。 次に、昨年度実施した「キャリア教育」と就業パフォーマンスに関するWEB調査から得られたデータを活用し、副次的な分析である「「幅の広い異動」が従業員に及ぼす影響-職種や仕事内容の変化に注目して-」を日本労務学会第45回全国大会で報告することができた。この分析の論文化ならびに「キャリア教育」と就業パフォーマンスに関する本格的な分析は、早急に目途を立てたいと考えている。 最後に、「キャリア教育」によって生徒・学生の意識下で「正社員モデル」からの逸脱が進み、NPOや社会貢献活動、ソーシャルビジネス等がキャリアの選択肢となり得るのではないかという問題意識から、日本NPO学会第18回年次大会にて複数の報告を行った。この点に関しては、今後5年間の主たる研究テーマとして発展させていくつもりである。
|