研究課題/領域番号 |
23530348
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研究機関 | 大阪国際大学 |
研究代表者 |
塩谷 雅弘 大阪国際大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70340867)
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キーワード | アジア新興市場 / 金融仲介の変化 / 資産価格 / 景気循環 / 金融循環 / 同調性 |
研究概要 |
本研究の目的は次の3つである。第1に、アジア諸国間で資産価格の循環的変動がどの程度同調・連動しているかを明らかにすること。第2に、アジア諸国における金融仲介の変化の特徴とその要因を明らかにすること。そして、第3に、アジア諸国間における景気循環の同調性の傾向を明らかにし、金融仲介の変化と関連付けて、同調性の特徴を検討することである。 本研究の2年目に当たる平成24年度は、以下のことを行った。第1に、アジア諸国における金融仲介の変化の特徴を、金融統計データと個別銀行の財務データをもとに調査した。前年度にBankScopeデータベースより入手したアジア諸国の個別銀行財務データを整理し、資産構成の多様化の様子を探った。アジア各国の銀行は、2000年代に入り、貸出や証券保有など資産を多様化させているが、その程度は銀行間および各国間でばらつきがあることが確認できた。銀行の資産を多様化させる要因についても検討を始めた。この検討は本研究の目的2を行う上で有益である。ただ、検討結果をまとめる段階にまでは至っていない。 第2に、アジア諸国における金融循環と景気循環の同調性に関する研究(Enya, 2012)の改善を行った。日本経済学会および東アジア経済学会(East Asian Economic Association)で報告し、討論者を始め参加者からのコメントを研究に反映させて、より分析を進めた。循環の上昇および下降局面の継続期間に注目し、これらを長期化させる金融的要因について、生存分析の考え方を用いて検討を行っているところである。この検討は、景気循環の特徴に影響を与える要因を探ることにつながるため、本研究の目的3である各国間の景気循環の同調性を検証する上で有益であると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的1および目的3の検討については順調に進んでいる。アジア諸国の金融循環と景気循環を特定し、両循環について、それらの同調性や特徴づける要因などの検討が進んでいる。ただ、本研究の目的2の検討はやや遅れ気味である。個別銀行財務データの処理および分析に時間がかかってしまっている。この遅れのため、当初、研究成果の英文校正代としての謝金などに支出を予定していた10万円を、次年度に繰り越すことになった。次年度の早い時期に、現在までの成果をまとめたい。さらに、必要に応じて研究協力者の協力も検討し、より完成度の高い分析を行うなどして、遅れを取り戻したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初の研究計画に沿って、今後の研究を行う予定である。平成25年度に予定している取り組みは以下のとおりである。第1に、アジア諸国の金融循環と景気循環の検討については、これまでの研究成果の完成度を一層高め、学術雑誌への投稿を目指す(本研究の目的1および目的3に関連する)。第2に、個別銀行の財務データの分析をさらに進め、金融仲介の変化とその要因についの見解を研究成果としてまとめ、関連する研究会や学会で報告する。ここで得られたコメントを研究に反映させて、分析の完成度の向上に努める(本研究の目的2に関連する)。これはやや進捗が遅れている作業であり、今後は、必要に応じて、研究協力者の協力も検討する。そして、第3に、本研究課題の研究期間の最終年度として、本研究課題の3つの目的とアジア経済統合を関連づけて、アジア諸国の金融循環と景気循環の視点から、アジア経済の統合化に関する知見をまとめてみたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、前年度からの繰越金10万円を含めて、60万円の支出を予定している。物品費として関連図書の購入や消耗文具品の購入を、旅費として国内外の学会報告および調査のための旅費を、そして、謝金として英文論文執筆のための英文校正代や学術雑誌投稿代を支出する予定である。
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