研究概要 |
本研究の目的は、次の3つである。第1に、アジア諸国間で資産価格の循環的変動(金融循環)について、第2に、アジア諸国における金融仲介の変化とその要因について、第3に、アジア諸国間における景気循環の同調性について、金融仲介の変化と関連付けて検討することである。 最終年度の平成25年度は以下のことを行った。第1にこれまでの取り組みから得られたアジア諸国の金融循環と景気循環をもとに、アジア諸国の金融循環の特徴、各国の景気循環と金融循環の関係について頑健性のテェックを行った。これはEnya(2012)に改善点として加え、再度英文校正を行った(本研究の目的1および目的3に関連)。今後、学術雑誌等で公刊したい。第2に、アジア諸国における金融仲介の変化の特徴を、金融経済データや個別銀行データをもとに調査した。アジア諸国における金融機関の資産構成の多様化や貸出先の多様化が進んでいること、そしてそれら多様化の程度は、アジア諸国間で、ばらつきがあることが確認できた。(本研究の目的2に関連)。第3に、アジア諸国を対象として、金融循環に影響を与える要因として資本流入がどんな役割を果たすか(本研究の目的1に関連する)、また各国の景気循環に強く影響を与えるようなタイプの金融循環に対して資本流入がどんな影響を与えるかを検討した(本研究の目的3に関連)。これは関連国際学会(Asia-Pacific Economic Association)で報告し、有益なコメントを参考に改善を行い、ディスカッションペーパーとして刊行した(Shinkai and Enya, 2014)。そして、韓国およびタイに在住する関連研究者を訪問し金融仲介の状況を調査した。最後に、この研究を通じて得られたアジアの金融循環に関する知見や政策的含意について、関連研究会において報告(塩谷, 2014)し、参加者から様々な視点からのコメントをいただいた。これらのコメントは、研究の更なる発展の方向性を検討する上で大変有益であった。
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