研究課題/領域番号 |
23530349
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
青柳 龍司 流通科学大学, 総合政策学部, 准教授 (60412087)
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研究分担者 |
于 洋 城西大学, 現代政策学部, 准教授 (60386521)
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キーワード | 公的年金 / 国際比較 / 国際情報交換 |
研究概要 |
日本においては、昨年(2012年)2月に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」により、社会保障の必要な財源確保、特に消費税率の引き上げが予定されている。 本研究でわれわれが注目したのは、税による経済活動に対する影響、特に税によるディストーション(いわゆる「歪み」)である。これまで、年金の財政方式の議論においてはあまり顧みられることのなかった資源配分の効率性という観点に着目し、公的年金の財源として消費税をはじめとした税目の効率性を定量化することを目指した。また、所得税(国税)や住民税(地方税)との比較検討も行い、議論の俎上に載せた。そのため、データ・資料収集に努めるとともに、先行研究の文献調査を実施した。具体的には、日中両国の年金制度一般(保険料の徴収と運用、保険金の給付など)に関するもの、財源に関する理論的、制度的解説に関するものなどである。 それらを踏まえ、中国における弱者層の社会保障制度の歴史展開と現状分析を行い、今後の実証分析と国際比較のための基盤整備をした。また、周辺領域であるものの、日本の地方税(住民税)の特質や課題についても併せて検討した。その結果、研究代表者と研究分担者併せて、学会発表2件、論文刊行1件を行った。このように、財源の問題について、従来の視点とは若干異なる角度から検討を行った。 一方で、日中の比較研究という性質から、于は現地調査を実施した。于は2013年3月21日(木)から3月 26日(火)まで北京および上海に赴き、国立社会保障研究所、人民大学、復旦大学、華東理工大学の教員にインタビューし、中国における年金および社会保障財源の最新動向について現地調査を行なった。また、今年度の共同研究のための打合せも行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の時点において、交付申請書に記載した「研究の目的」達成のため、着々と準備を進めているものの、いくつかの点で課題もある。特に、昨年夏の中国における社会状況の影響等もあり、青柳は中国での現地調査を断念した経緯がある。また、2012年度出版予定だった論文の刊行が2013年度に延期されたことなどから、研究の進捗状況は若干遅れている。 これらの遅れを取り戻すため、本年度は、浙江大学、中国人民大学等に在籍する研究協力者と相談し現地調査を行いつつ、論文の執筆に傾注したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の最終年度である本年度は、これまでの文献調査およびヒアリング結果に基づき、研究成果をまとめ、論文の執筆に専念したいと考えている。また、今年度は浙江大学、北京大学、中国人民大学等に在籍する研究協力者と相談し、現地調査を行う予定である。 研究方法は、引き続き(1)先行文献に関する分析を行うこと、(2)現地調査の実施とそれに基づく理論的・実証的分析を行うこと、および(3)学会参加を通して研究成果を発表すること、を考えている。研究の集大成として出版物の刊行を目指したい。 本研究では、主に日中の公的年金制度体系における財源調達問題についての比較検討を行っているが、今年度の重点的な項目は次のとおりである。 日本においては、昨年の「社会保障と税の一体改革」に基づき、社会保障の必要な財源確保、特に消費税率の引き上げ等が謳われている。しかしながら、その全体像は未だ明らかになっているとは言い難い。本研究では、公的年金の財源の問題に焦点を当てる。たとえば、消費税をはじめとした各税目の効率性を定量化する。特に、公的資金の限界費用という概念を用いて、数量的に把握し、公的年金制度の財源としての政策的なインプリケーションを導き出す。 また、中国については、現在進行中の年金制度改革における財源調達方法の変化に焦点を当て、それぞれの変化にある経済的・社会的な背景を分析し、その上で、社会保障の財源調達方法の変化をめぐる日中の共通性と異質性を見出し、それぞれに対して新しい評価を導出したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
必要な書籍や資料の購入費用に加えて、専門知識の提供やデータ整理入力作業に必要な謝金を計上する。また、現地調査ヒアリングを行うための出張費用、国内外の学会参加のための費用を計上する。さらに、論文の投稿費用なども計上する。
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