本年度は、本研究「公的年金制度の財源調達に関する日中比較研究」の最終年度に当たり、日中両国において、研究者の交流やシンポジウムの開催など精力的に活動した。一部は2014年4月以降になるが、論文の発表やこれまでの研究を踏まえた成果が見込まれる。 日本においては、本年度の消費税率の引き上げにより当初の年金改正(2004年改正)において目標とされた2分の1の国庫負担割合が実現された。青柳は、消費税の経済活動に対する影響、いわゆる資源配分の効率性(税によるディストーション)に着目し、消費税の導入について過去の研究で用いたデータやパラメーターをアップデートしながら再検討を行った。 また、千葉県市川市より提供されたデータに基づき、副次的な分析ではあるものの年金受給者の行動や実態について推計を行った。その結果、寄付行動や投票意識などの面では、65歳以上の年金受給者の意識は極めて高いこと、また年金受給者の二極化(比較的少ない年金収入(雑所得)のみの低所得世帯と年金収入に加えて不動産収入など副収入のある高所得世帯)が見られることを明らかにした。 于は、中国政府が進めようとしている「中国版皆年金」制度について、日本の高度経済成長期の年金制度構築を参考にしながら、負担と給付の両面から評価した。また、日本の公的医療保険財政における医療費の抑制メカニズムや高齢者福祉サービスの在り方について検討した。 青柳と于は、2013年8月24日~26日まで中国浙江大学で開催された「社会保障に関する国際会議」に出席し、中国国内での最新動向の把握に努めるとともに、国内外の研究者と積極的に意見交換した。さらに、2014年3月には、「国際シンポジウム:中国の社会保障改革の最前線」を共同で開催し、中国の年金制度改革に関する議論を深める機会を持った。
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