研究課題/領域番号 |
23530353
|
研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
朴 哲洙 熊本学園大学, 経済学部, 教授 (80238245)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 金融不安定 / 金融規制監督政策体系 / プルーデンス政策 / システムリスク |
研究概要 |
最近グローバルな金融危機の経験から強調されている金融仲介部門間の相互連係性から発生・増幅されるシステムリスク分析に、金融不安性の基準を取り入れ、その診断、実物経済部門への影響、そしてプルーデンス政策対応を実証的に再検討することにあることが本研究の目的である。その一環として初年度は, 先行研究からそれぞれの問題点と論点をまとめた。それによりシステムリスクの発生・増幅の要因の一つとしてとして考えられる金融仲介機関の相互連係性を特化、その経路や度合いに関する重要な条件や仮設を検討することができた。また先行研究文献からシステムリスクの性格や金融仲介機関間直接的な連係性を評価方法、金融監督・健全性(プルーデンス)政策・制度などに関する限界や改善など論点を整理した。国際比較のために韓国・中国の金融政策・監督体制に関する文献なども収集し先行研究の整理に活用した。さらに先行研究を整理しながら、想定外の現象として認識された金融危機が約10年ごとに起こっている事実と関連する諸問題と背景を金融史の観点から整理した。具体的には、金融システムを構成する金融仲介部門である銀行(資金仲介市場)、債券市場、株式市場(株式会社)の由来とマネーの流れ(資金調達や取引)を歴史的なエピソードや事例を中心に把握し、今は複雑になった各金融市場や制度の原型をまとめた。 調査研究した内容を研究ノートなどにまとめているが、できるかぎり研究会または実務者に見せ専門的な第3者意見を求め次年度の研究課題に反映することにしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目標を達成するために、初年度には、先行研究のまとめを中心とした論点整理と基本的な実態分析を行った。その達成状況と評価は以下である。 まず現状把握と先行研究から問題点を整理し論点整理を試した。これは今後、システムリスクや不安要因を究明する研究段階で実証研究のためにデータベース構築作業に非常に役に立つと評価できる。 次は、先行研究から問題点と論点をまとめることにより、金融仲介機関の相互連係性がシステムリスクの発生・増幅の要因の特化に関わる論点、その経路や度合いに関する条件や仮設を検討した。これらの進行状況については、マクロ側面からのある程度のまとめだと評価できる。しかし金融システム内の部門別、すなわち、資金仲介主体別(金融機関や金融市場別)に区分された各市場の不安指数を構築やそれを算出するための方法と項目を決めることなどは現在進行中である。その理由の一つあげられるのは、研究を進めるに当たり「複雑な経路が複雑な結果を出す」可能性もあるが、場合によって政策当局の行動、制度変化、投資主体の主観的な側面や習慣などにより、「単純な経路が複雑な結果が出る」こともありうる観点も考慮することになり、その点の検討をしているからである。 最後に実証研究に関しては、データベース構築するための作業の準備をつづけている。国内外マクロ統計、産業・金融機関から発行される既存の統計を一貫性のある形で再整理するとともに、金融システムと各部門の基礎データの構成を確認した。取集している資料やデータベース関連統計に対する1次基礎分析を一部行った。この作業は次の年度も継続的に行う予定である。 以上のように記述している現在まで達成した成果を中間まとめとして論集に載せるために研究ノートを作成しながら、本研究の問題点を明確にまたは可視化する形で学内の経済論集へ発表を準備している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進の方向として、まず理論的な側面から論点を整理しながら、金融安定や不安定に関する概念から金融不安指数の設定を試してみる。また関連資料収集や政策当局への調査を本格的に行い、その調査・ヒアリングから得た情報から基礎データベース構築を試す。それらに基づいて金融システムの健全性の度合いを規定する共通要因を究明する。具体的には金融システムの構成する金融仲介機関や金融市場(債券、株式、為替など)の安定・不安定の諸要因を究明・比較することにより、異なる部門における相対的な不安の度合いの究明を試す。とくに理論的な枠組みからの論議と実際の調査(日中韓の調査)から得られた事実と照らしながら、フィードバックを加えながら不安要因やリスクに関する論点を確かめる。これらは、次年度に研究推進において国際制度比較に基づいたシステムリスクと金融不安指数の測定により金融政策健全性など監督仕組みの多様性を究明に役に立つと期待する。 特に日中韓の現地調査や専門家のヒアリング、また学会など学術活動に積極的に参加し、その過程で得られた情報・知識や新たな考え方を生かしながら、国際比較を試す予定である。このような学術活動を通じて金融不安や危機の要因を地域特化し、その結果をまとめて研究ノート、論文などの結果をまとめる。一部の論文は海外または国内学術刊行物に投稿しながら、全体を本の形で出版できるように修正を加えながら編集作業を行い取りまとめる。可能な機会があれば、国内外の学会や講演会に積極的に出向き「金融不安ベース市場ネットワーク視点(Financial Instability Based Market Perspective Network Approach: FIBPNA)」からの成果を国内外に広く認知される努力をする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の計画書に基づいて研究費を使用する。物品費(470,000円程度)としてパソコンやノートなど購入し分析に生かす。またプリンター、コピー機など購入する。国際調査を実施するために韓国と中国で調査やヒアリングを行うことと金融危機や金融政策監督体制につての国内外の学会やシンポジウムに参加する予定である(旅費 約900,000円)。 研究の効率の向上のために研究協力者やアルバイトなど謝礼にも支出(人件費 200,000円程度)を計画。また昨年予定されていた海外調査などがけ研究代表者の健康上の状況や現地訪問先の事情により一部実行されてないこと、一部物品の未購入による研究費一部の繰り越したのもあるので、それも海外調査、学会参加、そして物品購入など各項目ことに昨年の計画に基づいて一定割合を決め有効的に使用する予定である。
|