最近グローバルな金融危機の経験から強調されている システムリスク分析が本研究の目的である。その一環として、繰返される金融危機の原因の一つとして金融システムの仕組みと金融仲介部門のバランスシートで表れる構造的な側面から分析した。金融不安定の精細な分析をするフレーム・ワークとして用いる理論モデルを構築した。そこで金融仲介機関など経済主体 のインセンチブを明示的に取り入れて、従来、不安要因として強調された民間企業として金融機関の資本(純企業価値)に加えて、貯金者・投資家に対するコミットメントの欠如を反映する「主観的な約束履行度(degree of pledgeability)」との関係も究明した。本研究の結果はマクロ経済変数やその他の条件が相対的に良好でもかかわらず金融不安を示現する経済(a revealed instability)におけるファンダメンタルかつ構造的なメカニズムを説明する重要な意義があると思われる。さらに金融部門の構造を金融システムの形成や進化からとらえ、日本をはじめ韓国や中国など東アジア経済における経済発展戦略と金融システム変遷の関係から繰り返される金融不安や金融危機の源泉を究明する方向へ研究範囲を拡張した。 歴史的な視点から金融危機の源流を規定することは、今までより多様な経済政策の示唆点を得ることができるからである。事後的な対応より事前的予防として構造的な側面にも関わる非伝統的な金融政策対応とマクロ健全性も含むマクロプルーデンス政策体系の再定義 を実証的に再検討することに貢献できるとを期待する。 本研究からの成果は、論文掲載と学会発表としてまとめた。国際学会で発表後、査読付き国際学術ジャーナルへ投稿した論文が採択されて正式に国際学術ジャーナルに掲載された。さらに国際制度比較分析の研究成果は学会の全国大会で発表した。また国際学会でその拡張論文を発表する予定である。
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