• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実施状況報告書

我が国の最適航空ネットワーク政策に関する理論とそのシミュレーション

研究課題

研究課題/領域番号 23530354
研究機関熊本学園大学

研究代表者

坂上 智哉  熊本学園大学, 経済学部, 教授 (50258646)

研究分担者 加藤 康彦  熊本学園大学, 経済学部, 講師 (80331073)
川崎 晃央  鹿児島大学, 教育学部, 講師 (10452723)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード航空ネットワーク / LCC / 参入路線選択 / シミュレーション
研究概要

研究代表者(熊本学園大学・坂上智哉)のもと,全体を「ネットワーク形成ゲーム理論班(A班)(リーダー:坂上智哉)」,「産業組織分析班(B班)(リーダー:川崎晃央)」,「シミュレーション班(C班)(リーダー:加藤康彦)」の3つに分けて研究を行った. 平成23年度の各班の研究実績は以下のとおりである.まず,理論モデル担当のA班では,Jackson and Wolinsky (1996) のConnections modelをもとに,航空ネットワークモデルを構築した.Jackson and Wolinsky (1996) では,ネットワークのノードに利得が生じるモデルであったが,これを,ノード間を結ぶ「リンク」に利得が生じるモデルに改良した. 航空ネットワークの産業組織論的アプローチを担当するB班では,ローコストキャリア(LCC)が,大手航空会社と同一の路線に参入するのか,大手が参入していない路線に参入するのか,という問題に対する研究を進めた.その結果,大手との費用格差が大きければ大手の参入していない路線に,費用格差が小さければ大手の参入している路線に,それぞれ参入する動機が強いことを明らかにした. シミュレーション分析を担当するC班は,A班のモデルをもとに進化計算アルゴリズムの改良および航空ネットワークの初歩的なシミュレーション分析を行った.航空ネットワークのシミュレーションでは航空業界を単一の企業とみなし,業界全体の利潤が最大化されるネットワークの形状を明らかにした.そのシミュレーションでは,PBIL(Population-Based Incremental Learning)と呼ばれる進化計算のアルゴリズム手法を改良したものを用いた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成23年度の達成度を各班について述べる.A班の目標である航空ネットワークモデルの構築については,基本モデルを作成できたという意味では達成したといえる.しかし,さらに検討を重ねた結果,設定した費用関数の構造に課題があることがわかったので,その改良が引き続き課題として残っている. B班については,大手の航空路線を所与とした場合の,LCCの参入戦略についての基本モデルの構築を行うことができた.基本モデルはMatsumura and Matsushima (2010)の2地域モデルであるが,これを3地域モデルに拡張した.しかし,我が国の航空ネットワークのシミュレーションにつなげるためには,これをn地域モデルに拡張する必要がある.さらに,A班とB班のモデルの統合という作業は,展望は見えてはいるものの具体的にはこれからである. C班では,PBILを改良し,航空ネットワークについてのシミュレーション分析を手掛けた.これは当初の計画に沿うものである.しかし,パラメータの推計方法に若干の課題が残っている.さらに,航空ネットワーク最適化問題において,どのようなアルゴリズムが最もふさわしいのかまで明らかにすることができなかった. このように,各班ともいくつかの課題は残してはいるが,その一方でA班とC班の研究成果の統合作業では,我が国の最適な航空ネットワークについて実際にシミュレーション分析まで進むことができた.この点は,当初の計画以上に順調に進んでいると評価できる.以上のことを総合的に勘案すると,平成23年度の研究は,おおむね順調に進展していると言えよう.

今後の研究の推進方策

前年度に引き続き,理論研究ではA班とB班,シミュレーションに関してはC班のもとで研究を進める. A班:平成24年度は航空ネットワークモデルの改善が喫緊の課題である.23年度に構築したモデルでは,乗継便には費用がかからないものと仮定していたが,乗継便にもある程度の費用がかかるものとすることが自然である.しかし,乗継便にも直行便と同様の費用関数を適用すると乗継便を形成する意味が無くなってしまう.そこで,乗継便による費用削減効果を残しつつ現実に即した費用関数を導入することを検討したい. B班:平成24年度は外国資本と国内資本が混在している日本型LCCの戦略に注目し,そうした航空会社がどのような路線に参入するのかについて,理論的なモデルを用いて明らかにしていく.そのために,平成23年度に用いたモデルを,国内資本と外国資本の両方が企業資本に入っているようなモデルに修正し,平成23年度に行った分析と同様の分析を行っていく. C班:平成23年度のアルゴリズム改良についての研究では,テスト関数による性能評価を行い,各提案アルゴリズムが標準のアルゴリズムの性能上回ることを示した.しかし,航空ネットワーク最適化に応用するものとしてどのアルゴリズムが最もふさわしいのかまでは明らかにできなかった.そこで,平成24年度は航空ネットワーク最適化問題における性能評価実験を行う. 最後に,A班とC班の共通の課題として,大手航空会社の航空ネットワークを所与とした場合,後発のLCCはどの路線に参入するのか,といった観点でのシミュレーションも手掛けたい.これにより,LCCの路線参入問題を分析しているB班の研究と,統合を進めることができる.

次年度の研究費の使用計画

「物品費」については,航空ネットワーク関連の図書の購入を中心に計画している. 「旅費」については,研究打ち合わせのための旅費に加え,国内外での学会発表での使用を計画している.特に,平成23年度の研究成果の一部を,アメリカで開催されるWORLDCOMP’12にて発表する機会を得た(ちなみに採択率は25%である).当初は研究期間の最終年度(平成25年度)に国際学会での報告を計画していたが,平成23年度において研究成果の一部をまとめることができたため,前倒して平成24年度に海外での発表を開始することにした.このための旅費を確保するため,平成23年度の研究費の一部を使用せず,平成24年度に充てることにした. 「謝金」については,大学院生を雇用し,データ入力等の研究補助を行ってもらう. 「その他」については,英文論文の校正費などでの使用を計画している.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 航空ネットワーク最適化問題の進化計算によるシミュレーション分析2012

    • 著者名/発表者名
      井上寛規, 加藤康彦, 坂上智哉
    • 雑誌名

      電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門)

      巻: vol.132, No.7, Sec.C ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] スケールフリーネットワーク型動的集団構造に基づいた Particle Swarm Optimization (PSO)による最適化問題の解法2012

    • 著者名/発表者名
      井上寛規, 加藤康彦
    • 雑誌名

      文理シナジー

      巻: Vol.16, No.1 ページ: 31-36

    • 査読あり
  • [学会発表] 就航機材を考慮した航空ネットワーク最適化問題の進化計算によるシミュレーション分析2011

    • 著者名/発表者名
      井上寛規, 坂上智哉, 加藤康彦
    • 学会等名
      経営工学会平成23年度春季大会
    • 発表場所
      愛知学院大学
    • 年月日
      2011年5月29日
  • [学会発表] 航空ネットワーク最適化問題の進化計算によるシミュレーション分析2011

    • 著者名/発表者名
      井上寛規, 坂上智哉, 加藤康彦
    • 学会等名
      2011年度日本経済学会春季大会
    • 発表場所
      熊本学園大学
    • 年月日
      2011年5月11日
  • [学会発表] 個々のアリの記憶情報を利用したPopulation Based ACO2011

    • 著者名/発表者名
      井上寛規, 加藤康彦
    • 学会等名
      経営工学会平成23年度秋季大会
    • 発表場所
      いわて県民情報交流センター
    • 年月日
      2011年11月13日

URL: 

公開日: 2013-07-10  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi