研究課題/領域番号 |
23530358
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
内藤 久裕 筑波大学, 人文社会科学系, 准教授 (00335390)
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キーワード | 社会保障 / 移民 / 移民受け入れ / 持続可能性 / パレート改善 / 資本蓄積 |
研究概要 |
超少子化社会を迎え、近年、移民受け入れによる経済社会の持続的発展可能性が議論されているが、経済学の文献においても、まだ決まった結論は得られていない。この科学研究費での研究目的は、シミュレーションと実証分析によって移民受け入れの経済的インパクトを定量的に把握することである。 平成23年度では、シミュレーションモデルを完成させ国際学会で発表した。また海外の研究者と交流し、いくつかの重要なコメントおよび、海外での移民に関する重要なデータを得ることができた。得られたコメントのなかで重要なもののいくつかは、(1)人口動態が機械的に設定されている。(2)移民と自国民の年齢別出生率の違いが無視されている(3)より多くのパラメータで結果の頑強性のチェックを行うべき というものであった。 平成24年度では、平成23年度に作成したシミュレーションモデルを以上のようなコメントに基づき改善し、シミュレーションを完全化することを目標とした。具体的には、(1)移民と自国民が、年齢別の確率的な出生率に直面し、その確率のもとで出生をするモデルを作成 (2)移民と自国民の出生率の違いに関してアメリカのセンサスデータをもとに、パラメータ化をおこなう (3)リスク回避度、社会保障の所得代替率、移民の所得の程度、移民の受け入れ速度などの多くのパラメータの値を変えてのシミュレーションの実行,の3つを行った。また実証分析のための海外データの入手もおこなった。 シミュレーション分析では、移民と自国民の比率を12.5%から22.5%へ上昇させる移民政策をとった場合(アメリカの場合)、全世代がパレート改善しつつ、資本蓄積レベルが黄金律状態に達成するのに112年かかり、パレート改善の程度の割引現在価値は、初期時点のGDPの約20パーセントに達することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は、アメリカの経済モデルのシミュレーションモデルの分析をおえ、日本のシミュレーション分析を行い、また同時に実証研究を行う予定であったが、シミュレーションモデルの細かなチューニングに予想外の時間がかかり、日本のシミュレーションモデルの作成、および実証分析に時間を使うことができなかった。ただ平成24年度では、実証分析を行うことはできなかったが、いくつかの必要な海外のデータは入手することができた。また海外の研究者との交流の中で、これまで考慮に入れていなかった視点を持つことの重要性が認識できた。 平成25年度では、新たなアメリカ経済におけるシミュレーションモデルの作成、日本のシミュレーションモデルの作成、移民に関する実証分析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、以下の4つの事を行うことを目標とする。(1)日本経済における移民受け入れのシミュレーション、(2)アメリカにおける最適移民政策の計算、(3)移民が経済におよぼす影響の実証分析、(4)海外研究者との交流と自分の研究の広報宣伝。実証分析のために、アメリカ、およびカナダの移民および企業のentry-exitのデータを入手し使う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、以下の4つの事を行うことを計画している。(1)日本経済における移民受け入れのシミュレーション、(2)アメリカにおける最適移民政策の計算、(3)移民が経済におよぼす影響の実証分析。(4)研究結果の海外での発表と意見交換。特に実証分析のために、アメリカ、およびカナダの移民および企業のentry-exitのデータを使うことを計画している。 これらの計画を念頭に入れたうえで、研究費の用途としては、具体的には、(1)計算のためのワークステーションの計算能力の増強、(2)実証分析のためのデータ収集(特に海外データ)と分析作業、(3)海外研究者との交流、の3つがある。これら3つのために収支状況報告書で次年度使用額となっている科学研究費を使う。
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