研究課題/領域番号 |
23530359
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒巻 健二 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90295056)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | PSI(民間セクター関与) / 資本流出規制 / Vienna Initiative / 欧州債務危機 / アジア通貨危機 / ギリシャ危機 |
研究概要 |
23年度においては、PSI事例及び資本流出規制事例に関する資料の収集を行うとともに、最新のPSI事例である08~09年の中東欧のケース(いわゆる"Vienna Initiative")について、現地調査を実施した。調査対象は、同Initiativeの推進役となった墺財務省及びEBRDを中軸としつつ、同Initiativeに参画したEU委員会、更には同Initiativeの下で融資のロールオーバーを実施した民間銀行とした。更に23年度中には、OECD事務局に対し、これまで加盟国の資本取引自由化を推進してきたOECD資本自由化コードと、世界金融危機時に大きな資本流出圧力に曝された加盟国の対応(実質的に資本取引規制として機能しうる措置も含まれる)との関係等についてヒアリングを行った。更に、23年度中には欧州債務危機が再燃し、その対応が検討される過程でギリシャ支援の一貫としてPSI(政府債務削減への投資家の自発的協力)が浮上し、実行に移されることとなった。本ケースでのPSIは、債務のロールオーバーを求めたVienna Initiativeとは異なる要素を含むものであるが、そうしたPSIが危機の収束に対してどのような効果を有したかは本研究を進める上でも重要なポイントとなるものであることから、欧州債務危機の進展とその深刻化の要因をPSIにも焦点を当てつつ分析し、「欧州債務危機」(東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻紀要『国際社会科学2011』第61輯 2012(予定) )として取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近時のPSI事例であるVienna Initiativeについて、現地調査を実施し、その形成プロセスについての理解を深めたことに加え、資本取引規制としての側面を有するマクロプルデンシャル規制とOECD資本自由化コードの関連等につき、OECDからのヒアリングを実施し、OECDとしての考えと検討状況を把握した。更に当初の研究計画策定時には予想していなかった欧州債務危機再燃の中で、ギリシャ支援の一環としてPSI(政府債務削減への投資家の自発的協力)が浮上したが、そうした形でのPSIについては危機収束にネガティブな影響を及ぼすことが懸念されたことから、そうした視点も踏まえて欧州債務危機の進展とその深刻化の要因について分析を行い、論文に取りまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
24年度においては、引き続きPSI及び資本流出規制の事例について資料を収集する。同時に、今年に入ってから一時リオープンの動きのあったVienna Initiative(世界金融危機の一応の収束後は個別国を対象とする会合は開かれていない)の推移、及び再燃が懸念される欧州債務危機の動向(特にPSIや資本流出規制関連の動き)について、引き続きフォローを行う。更にPSIないし資本流出規制の事例の中で調査分析が必要な他の適切な事例について、現地調査を含め調査分析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度においても、23年度中に購入が出来なかったものを含め、PSI及び資本流出規制の事例、及び欧州債務危機に関するIMF、EBRD、OECD等の資料の購入を行うとともに、現地調査が必要と考えられるPSIないし資本流出規制の事例について、海外への出張調査を行う。
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