研究課題/領域番号 |
23530359
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒巻 健二 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90295056)
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キーワード | PSI / 国際金融危機 / 資本規制 |
研究概要 |
25年度においては、PSI及び資本流出規制に関する資料の収集と意見聴取を継続するとともに、これまでに収集した資料の分析を進めた。PSIに関する資料収集及び意見聴取については、流動性危機における個別のPSIケースについての公的な資料が限られていることから、機会をとらえ米財務省OB等からヒアリングを行うとともに、ロンドンにおいて現地メディアの報道内容等を収集した。併せて、これまで収集した資料の分析を進め、1990年代後半以降の各ケースのプロセスの特色と今後の適用可能性について検討した。 資本流出規制を含む資本規制に関する各国の経験については平行して検討を進め、1997年のアジア通貨危機からの深刻な影響を免れた中国について危機後の対応を含め過去四半世紀にわたる資本取引規制の自由化を俯瞰する研究を「中国の資本取引自由化-1980年代以降の緩和プロセスとその特徴-」(小川英治責任編集『中国資本市場の現状と課題』2013年 資本市場研究会) にまとめた。更に、2014年2月には、Boston大学国際関係学部がColumbia大学、中国社会科学院と共催する国際Workshop“Capital Account Liberalization in China: Learning Lessons”に招聘され、国際的な資本フローの不安定性に対する資本規制上の対応についての日本の経験と中国への示唆に焦点を当て“Capital account liberalization: Japan’s experience and its implications to China”とのテーマで報告した。今後報告内容は、Kevin P. Gallagher (ed.)“Capital Account Liberalization in China: Learning Lessons”(仮題)に収録される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流動性危機における最新のPSI事例であるVienna Initiativeについては既に調査を行い、その他の事例(韓国、ブラジル、トルコ等)についても、公的な資料が極めて限られている中で、海外における現地調査等を通じて資料を収集し、事例分析を進めている。同時に資本流出規制を含むこれまでの資本取引規制に係る各国の経験について調査を進め、その示唆についても検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究は当初25年度までを予定していたが、研究代表者が26年の夏よりサバティカルによりロンドンで在外研究を行うことになり、OECD諸国によるものを含む近年の資本取引規制の経験やVienna initiativeのその後の状況等についてロンドンに足場を得て調査を行うことが可能となった。このため、、1年間の期限延長を申請しその承認を受けたことから、残された課題については、現地で調査研究を行い、それを通じて国際的な流動性危機の予防と管理においてPSIが果たし得る役割について示唆を得ることとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者が26年の夏よりサバティカルでロンドンにおいて在外研究を行うことになり、近年の資本規制の経験やVienna initiative等について現地で調査を続けることが可能となったことから、1年間の期限延長を申請しその承認を受けたため。 PSI及び資本流出規制を含む資本規制に関する資料収集と、関係者からの意見聴取を行いつつ、その分析と示唆の抽出を行う。
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