研究課題/領域番号 |
23530365
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
川瀬 憲子 静岡大学, 人文学部, 教授 (40224779)
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研究分担者 |
三富 紀敬 静岡大学, 人文学部, 教授 (80135227)
鳥畑 与一 静岡大学, 人文学部, 教授 (60217594)
寺村 泰 静岡大学, 人文学部, 教授 (20197809)
橋本 誠一 静岡大学, 人文学部, 教授 (90208447)
太田 隆之 静岡大学, 人文学部, 准教授 (50467221)
小倉 将志郎 静岡大学, 人文学部, 准教授 (90515404)
児玉 和人 静岡英和学院大学短期大学部, 現代コミュニケーション学科, 講師 (10583362)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地域再生 / サステイナビリティ / 地域セーフティネット / 地域経済 / 地域産業 / 内発的発展 / 地域政策 / 地方財政 |
研究概要 |
本研究は、サステイナビリティと地域セーフティネット構築による地域再生への新しい視点を示すことにある。主として調査の対象としているのは、静岡県内でも最も衰退の著しい伊豆地域であり。とりわけ生活保護率や財政指標など貧困化を示す指標が最も高い熱海市、伊東市、下田市の3市である。平成23年度は科研費プロジェクト初年度いうこともあり、3市を中心とした自治体やNPOなどにおけるヒアリング調査を実施した。特に、2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原発事故に伴う観光客の激減等による観光業への影響などについて、重点的に調査を行った。 さらに伊豆地域が三陸沿岸地域と酷似している点にも着目し、比較検証をするため3・11後の被災地調査も数回にわたって実施した。本研究は「地域再生」に着目しているが、被災地の再生も新たなる課題となっている。こうした被災地調査については、科研費以外の公費や学内競争的配分経費も活用したが、科研費プロジェクトとの関係も深い。それは、静岡地域は東海大地震が想定されており、浜岡原発を抱えていることや伊豆地域において津波被害が想定されていることから、地域のサステイナビリティ構築のためには防災の観点も必要であると判断したためである。 本研究は、(1)伊豆地域や類似地域の現状分析・課題の抽出、(2)弱体化した地域のセーフティネット再生・構築のための政策提案、(3)維持可能な社会に向けた条件整備のための政策提案、というステップにしたがって調査を進めている。初年度は主として(1)のステップを中心に調査を実施した。これらの研究成果は、各メンバーによる論文に収録されており、24年度には学会報告も予定している。さらに、海外との比較検証については、すでに2012年2月にアメリカについては川瀬が著書を刊行している。今後も引き続き海外先進事例との比較検証を行っていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定である伊豆地域のヒアリング調査等については順調に進めている。すでに熱海市役所観光課や伊東市における各種NPO、下田市における法曹関係者、河津町役場へのヒアリング調査などを実施した。熱海市調査には、鳥畑与一、寺村泰、太田隆之、児玉和人、川瀬憲子、伊東市調査には児玉和人、川瀬憲子、下田市調査には橋本誠一、河津町調査には太田隆之がそれぞれ担当した。 さらに「実績の概要」でも示したとおり、3・11以降に新たな課題が加わったこともあって、数回にわたる被災地調査を実施した。福島県、宮城県、岩手県内の被災地を中心に、自治体関係者、ホテル・観光協会、NPO、地域金融機関、中小企業家同友会などを中心にヒアリング調査を実施した。この結果、被災地における地域再生のみならず、伊豆地域の地域再生を考える上での新しい課題を見いだすことに成功した。その意味では、当初の計画以上に進展していると考えられる。 また伊東市のNPOを中心とした市民グループからは、我々の伊豆地域の貧困化と地域セーフティネット構築を中心とした共同研究に着目していただいた。2011年12月に伊東市の協力の下でシンポジウムを開催した。シンポジウムについては、『伊豆新聞』にも取り上げられた上に100名以上の参加者があり、関心の高さを窺い知ることができた。 なお、本研究は静岡大学学内でも2つのチームに分かれて研究を行ってきたが、今回採択されたのとは別のチーム(経営学系分野)が『観光の活性化と地域振興』と題する共同執筆の著書を出版した。太田隆之は両方のチームに関わっているため、本研究の研究成果の一部を掲載している。もちろん私たちのチーム(政策系分野)も、『伊豆の地域再生』(仮)と題する本の出版に向けて、さらなる調査研究に取り組んでいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでの研究をもとに各メンバーが所属している学会報告を行うなど新たな一歩を踏み出すことにしている。調査の対象も、伊豆地域や被災地などの衰退が著しい地域のみならず、地域再生の先進事例についても積極的に調査を行う予定である。海外の先進事例調査も実施する予定である。ただし、平成23年度と同様、本科研費だけでは経費が不足するため、それぞれの公費や別の外部資金などを充当することもある。 伊豆地域の調査については、前年度に実施できなかった伊東市役所と下田市役所の調査も実施し、調査対象も伊豆地域の他の自治体にも広げていくことにしている。また、被災地調査も引き続き行う。2012年5月の地方財政学会にはすでにエントリーをしているが、10月の財政学会等でも発表する予定である。また、海外調査は夏頃に実施を予定している。国際財政学会がドイツ(ドレスデン)で開催されることもあり、ドイツの地域再生に向けた先進事例なども調査対象に加えたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は調査旅費(国内と海外)と学術文献・資料収集のための図書費や資料費、また研究成果をまとめるにあたっての諸経費などを支出していきたいと考えている。国内調査については、伊豆地域調査、地域再生における先進事例調査、大震災による被災地域調査(主として伊豆地域と酷似している三陸沿岸地域)の3つを対象としている。 現時点では、4月に被災地調査(石巻市や女川町など)、6月に先進地域調査(海士町など)、8月に伊豆地域調査とドイツ調査が決まっており、概ね先方とのアポイントメントも取り付けている。秋以降については、今後詳細な予定を立てるつもりだが、少なくとも伊豆の地域調査は数回程度、それぞれの担当ごとに手分けして実施する予定である。 また、年に数回程度、伊豆研究会を実施し、それと同時に関連文献や関連資料収集も継続して行うことにしている。
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