研究概要 |
地方団体の財政状況を決定するさまざまな要因を数量的に明らかにすることが研究の目的である。本研究では、多くの決定要因に加え、これまで明示的に取り上げてこられなかった地方団体の財政運営に関する「選好」が異なるという仮説の下で研究を進めた。複数団体へのヒアリング、ケーススタディや数量分析の結果、現段階では一部の地方団体においてこの仮設が認められるという限定的な結果が得られた。ただし、「選好」と他の地域性などの要因と独立な要因であるか否かについては、識別できていない。さらに、より多くの地方団体に対してこの仮設が適用可能かどうかについてはさらなる検討が必要である。 ただし、この研究経過において、本研究に加え、新たに検討すべき仮設を得たことは重要である。地方団体の財政運営に関する「選好」が一定との仮定の下で研究を進めてきたが、「選好」が財政状況により変わり得るという興味深く、またきわめて現実的な推論に到達した。このことはこれまでなされている本分野での理論的研究および実証的研究での係数一定との仮定に疑問を投げかけるものであるし、地方団体における「選好」がどのように構成されるかについての考察の必要性を提起するものである。 また、カナダを対象とした研究においては、地方財政調整制度を構成する各州の「選好」をオンタリオとケベックの2州に焦点を当てて分析し、カナダ平衡交付金の歴史は, 「制度項目別」の頑健性という視点から, 誕生期の標準税方式(1957~66年度), 発展期の代表的税制方式(1967~2006年度), 成熟期の新定式配分(2007年度以降)の3期間に区分できる、ことを明らかにした。
|