研究課題/領域番号 |
23530369
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
森 伸宏 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (40190996)
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研究分担者 |
岡村 誠 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (30177084)
友田 康信 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30437280)
小倉 義明 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70423043)
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キーワード | 有担保融資 / 無担保融資 |
研究概要 |
我々の研究の目的は、銀行による担保の要求が実物経済に与える影響を、産業組織論に基づいた新しい視点により、理論的・実証的に明らかにすることである。具体的には、企業が借入をおこなう時に、担保が必要か否かによって企業活動がどのような影響を受けるのかを、理論と実証の両面から明らかにする。さらに、借入制約が企業の参入数や経済厚生に与える影響についても分析することを目指している。 そのために理論分析においては、以下のような状況を分析するモデルを作成した。新製品を開発し、それを販売する独占企業を設立しようとする経営者が、必要な資金を調達する手段をどのように選ぶのかを考える。彼は新製品の市場規模についての不確実性に直面している。彼にとって選択可能な手段は、保有する資本設備を担保とする代わりに低い金利で資金を調達する方法(有担保融資)と、担保は不要だが、高い金利を支払うことにより資金を手に入れる方法(無担保融資)である。このモデルを使い、昨年度は市場規模が大きい場合に経営者は無担保融資を選び、一方で不確実性が大きい場合には有担保融資が選ばれるという暫定的な結果を得た。本年度は、この結果をさまざまな研究会などで報告し、得られたコメントを参考にモデルの改善をおこなった。その一方で、このような借入制約が、企業の参入数や経済厚生に与える影響についての分析も開始した。 実証分析からは、開業後10年以内の企業において経営者の保有する資産も含めた担保の利用可能性が、企業の融資獲得可能性に影響を与えていないこと、および、さらに業歴の長い企業を含めた分析でも担保の有無が融資の際の金利に有意な影響を与えていないことが、企業の個票データを用いた分析から確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はほぼ予定通りに進んでいる。我々の研究の目的は、企業が借入をおこなう時に、担保が必要か否かによって企業活動がどのような影響を受けるのかを、理論(借入制約が企業の活動に与える影響に関する理論的研究)と実証(企業の直面している借入制約と土地保有に関する実証研究)の両面から明らかにすることである。 本年度は、理論研究については、昨年度完成した論文をもとに、さまざまな研究会等で報告をおこない、得られたコメントをもとに論文の完成度を高めることを目指した。さらに、企業が借入制約のある有担保融資とそのような制約のない無担保融資のどちらを選ぶのかによって、経済厚生にどのような影響を与えるのかに関しても分析に着手した。 実証研究においては、担保に供しうる資産の量が企業の融資可能性や融資条件に与える影響を明らかにしてきたものの、借入制約の程度と担保用不動産の保有量の関係を統計的に明らかにするには至っていない。後者の分析に必要な政府統計等の個票データへのアクセスについては、一定の不確実性・制約が残るものの、目途は立っている。
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今後の研究の推進方策 |
理論分析については、まず昨年度作成した論文をさまざまなコメントをもとに改訂した論文を学会誌に投稿する。さらに、企業が借入制約のある有担保融資とそのような制約のない無担保融資のどちらを選ぶのかによって、経済厚生にどのような影響を与えるのかに関しても、結果をまとめ論文を完成させる。そのうえで、学会や研究会等で報告をおこない、論文の完成度を高め、学会誌への投稿を目指す。 実証分析については、担保に供しうる資産の量が融資可能性や融資条件に与える影響についての分析のさらなる精緻化をおこなうと同時に、借入制約の程度と担保用資産の保有量の関係を明らかにするためのデータの整備および統計分析の完成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
理論分析と実証分析のどちらにおいても、作成した論文をさまざまな学会や研究会等で報告するための旅費として使用する。そこで得られたコメントなどをもとに論文を改善し、国際的な学会誌に投稿するために、英文のチェックなどにも使う。また、実証分析においては、データセットを拡充・整備するために必要なデータの購入もしくは、その入力をおこなうための謝金として使用する。
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