研究課題/領域番号 |
23530370
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡本 章 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (10294399)
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研究分担者 |
乃村 能成 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70274496)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 人口減少 / 少子高齢化 / 少子化対策 / 子育て支援 / 年金改革 / パレート改善 / ライフサイクル一般均衡モデル / シミュレーション分析 |
研究実績の概要 |
日本政府は、昨年6月に経済財政運営の基本方針「骨太の方針」において「50年後にも1億人程度の安定的な人口構造を保持する」ことを目指すという人口目標を掲げた。政府が具体的な人口目標を表明するのは史上初めてのことであり、ついに政府が少子化対策に本腰を入れ始めたと言うことができる。本研究課題では、将来の人口動態が内生的に決まるように世代重複モデルを拡張することにより、このようなわが国が直面する喫緊の最重要課題の一つに対して具体的な政策提言を行うことが可能となった。 このように拡張されたシミュレーション・モデルを用いて、政府による子育て支援が人口動態に与える影響を分析した。その結果、政府の子育て支援を増やせば総人口は増加するが、その増加割合は累増していくことが定量的に示された。すなわち、育児支援を拡充するにつれて、その増加割合以上に加速度的に人口が増加することが示された。また、育児支援政策は人口動態に影響を与えることから、長期的な経済成長に大きな影響をもたらすことが示唆された。しかしながら、育児支援政策は短期的には経済にマイナスの影響を与える可能性がある。なぜならば、子供が成人して社会に貢献できるようになるためには約20年程度の年数が掛かることと、育児支援政策にはその財源が必要とされるからである。 政策の変更は異なる世代に異なる影響を与えるため、育児支援政策を促進することにより、厚生が改善する世代もあれば悪化する世代も存在する。そこで、無限の将来の世代の家計の厚生の変化まで勘案した、政策案の経済厚生全体への影響を見極めるために、仮想的な政府であるLSRA (Lump Sum Redistribution Authority)を導入した。その結果、育児支援政策の促進は、適切な資金移転を行うことにより全ての世代の厚生を改善できる、すなわち、パレート改善できる政策であることが示された。
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