• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

不良債権処理への影響要因に関する分析

研究課題

研究課題/領域番号 23530374
研究機関横浜市立大学

研究代表者

随 清遠  横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (80244408)

キーワード不良債権処理 / 原価法・低価法 / 繰延税金資産 / 土地の再評価
研究概要

本研究は、1999年3月期-2008年3月期までの期間を対象に、銀行部門の不良債権の変動要因を検証した。1998年から2001年にかけて実施された会計基準の変更がいかなる影響を及ぼしたか、分析の焦点とした。
われわれは三つの会計ルールの変更に注目する。一つは、1998年3月期における銀行部門有価証券保有の評価基準の変更である。もう一つは、土地の再評価である。そして三番目は、繰延税金資産の計上である。1999年3月期以降、繰延税金資産の計上が認められ、ほとんどの銀行が繰延税金資産の計上を実施した。われわれの研究では、こういったルール変更の容認緩和的性格を予件としてこれらの政策が個別銀行の不良債権処理プロセスにどのような影響を及ぼすかについて検証する。
銀行の不良債権処理の代理変数としてわれわれは不良債権処理損失計上額と不良債権残高の増加率を重視する。検証の結果、1998年から1999年にかけて実施した会計ルールの変更は、銀行の不良債権処理の先送りを促進した側面が強い。県民総生産の増加率は一貫して不良債権処理を促進し、不良債権残高を減少させている。2002年3月期以前と比べて不良債権比率が減少した2002年3月期以降の時期においては不良債権処理損失の計上は有意にそれまでの不良債権規模に影響するようになった。これは、規制当局による資産査定の強化や経営改善を厳しく求めた結果と解釈できよう。
容認的会計ルール変更は有意に不良債権処理を促進しなかったという意味で本研究はこれらの政策の効果を否定した。しかし、決済システム等の信用秩序の維持にとっては、容認的政策は別次元の問題として意味を持つことがありえよう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

第一弾として、不良債権の影響要因に関する分析はすでに完成した。
現在それと関連する問題、不良債権の処理プロセスが銀行経営のパフォーマンスないし銀行の仲介機能について研究を進めている。

今後の研究の推進方策

今の日本経済は新しい状況に直面している。2002年に「金融再生プログラム」の実施にともない、銀行部門の不良債権比率が劇的に減少し、全国銀行部門の不良債権比率は、2006年3月期以降一貫して3\%以下の水準を維持してきた。
長年経済を苦しませたとされる不良債権問題は、2006年以降終息した。しかし、景気変動にとって足かせとなっていた問題が解決されたにもかかわらず景気回復への目たった効果が観察されない。もちろん、2008年以降のリーマンショック等のショックが経済に新たに負の影響を及ぼした側面が否定できないが、銀行部門の不良債権処理プロセスにおける多くの問題が依然として十分解明されていないままである。
2002年以降の不良債権処理プロセスが、銀行経営の健全性やその仲介機能にどういう影響を与えたかに関しては、本研究は継続して、この問題を実証的に検討する。

次年度の研究費の使用計画

これまでの未使用額と合わせて次年度は予算額は約75万円ある。
使用計画は下記の通りである。
海外学会発表関連費用、20-25万円。
研究補助10万円。書籍・資料費、20万円。
計算器具・ソフトウエア、20万円。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 『金融システムと金融規制の経済分析』、第9章「不良債権処理への影響要因について」2013

    • 著者名/発表者名
      大瀧雅之・花崎
    • 総ページ数
      18ページ
    • 出版者
      勁草書房

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi