研究課題/領域番号 |
23530375
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
川瀬 光義 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (40195095)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 基地返還跡地 / 米軍再編 / 国際情報交流 / 韓国 |
研究概要 |
研究実施計画では、3つの類型に分けて沖縄の跡地利用の事例を調査する予定をしていたが、今年度の最大の成果は第1の類型である商業型開発の一事例、北中城村のアワセゴルフ場跡地利用跡地利用政策の実情を検証したことである。これまでの返還事例の多くは、原状復帰と地権者の同意を得るまでに時間を費やしたために、地権者に支払われる給付金の支払期限をすぎても計画された土地利用が実現しない事例が多く、このことが、地権者が返還を望まない最大要因の一つだった。本事例においては、返還を見越して村が早くから取り組みをすすめていたこと、ほとんどの地権者が該当地域周辺に居住していたことなどにより、給付金の支払期限を待たずに、めざす土地利用が具体化することが確実となっている。しかし、その内容は、大型商業施設が中心であり、道路事情が改善するならば、近隣のハンビー飛行場跡地利用の成功例として有名な、北谷町のアメリカンビレッジと商圏が競合することが危惧されている。 さらに、2012年度に大幅に拡充された沖縄振興のための特別交付金について、これまで沖縄に投じられてきた基地受入れの見返り的性格が強い各種交付金と比較し、これまでの交付金との類似性があることを明らかにした。しかし、沖縄県のイニシアティブを発揮できる余地が従来になくあり、それが今後の跡地利用政策を財政面で支える可能性が高いことも指摘した。その成果の一部は、2011年3月30日に早稲田大学で行われた沖縄国際シンポジウムで報告した。 研究協力者である林公則は、アメリカ合衆国フロリダ州ジャクソンビルの軍事基地跡地利用政策に関する研究成果を発表した。半世紀近く基地に大きく依存した地域経済構造を有していたジャクソンビルにおいて、基地閉鎖後のまちづくりにおける住民参加の実情を明らかにしたこの研究成果は、今後本研究で韓国の事例を取り上げるに際して貴重な参考事例となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で示した3類型、(1)返還跡地について一定の利用実績をあげている事例てある沖縄県北谷町ハンビー飛行場跡地と那覇市天久地区など、(2)返還を見越して利用計画の策定がかなりすすんでいる読谷村、中城村など、そして(3)これまで基地に関連する財政収入を梃子として地域振興を図ってきたが、そうした手段に見切りを付けて、第1次産業の復興を核とする独自の政策をすすめようとしている名護市など、これらに関する基礎的な資料の収集は順調にすすでいる。 これら資料のうち、中城村などの事例から、「研究目的」の一つである跡地利用計画作成における地権者の合意形成の困難を克服する手がかりを得ることができ、研究初年度で一定の成果をあげることができたと評価できる。 また、2012年度に大きく拡充された沖縄振興のための一括交付金の特徴を把握できたことは、この資金が跡地利用政策を進めるうえでどのように活用されるべきかについて政策提案できる手がかりとなった。 さらに翌年度の韓国の事例との比較研究を進める上で、従来から研究交流をすすめている京畿開発研究院に加えて、韓国最大の環境NGOである緑色連合(GREEN KOREA)の協力を得ることがでる目途がついたことも、大きな成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のもう一つの柱が韓国の基地返還跡地利用政策との比較研究である。沖縄の典型例についての基礎資料の収集はおおむね成し遂げたので、今後の資料収集の主たる対象は韓国の事例に関するものとなる。その際、韓国で最も米軍基地が集中し、かつ返還事例が多い京畿道に所在する京畿開発研究院、および韓国最大の環境NGOである緑色連合の協力を得て資料を収集する。そして、研究目的に示した3類型のうちの2類型((1)基地返還跡地についてすでに一定の利用実績をあげている事例、(2)返還を見越して利用計画の策定がかなりすすみ、一部事業に着手している事例)に注目して、日本で課題とされた諸点がどのように克服されているかを検証する。さらに、2012年8月にドイツのドレスデン工科大学でおこなわれる International Institute of Public Finance 年次大会に参加し、その際、冷戦崩壊以降、多くのNATO軍基地・旧ソ連軍基地が返還されたドイツの基地返還跡地利用政策の実情をも調査する。 また、沖縄での補充調査においては、沖縄振興のための新たな交付金が、基地返還跡地利用を円滑にすすめる上で、どのような役割を果たす可能性があるかについても注目する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者が、8月にドイツのドレスデン工科大学でおこなわれるInternational Institute of Public Finance年次大会に参加し、その際、ドイツにおける基地返還跡地利用の実情を調査する。そのための旅費、通訳者への報酬等として約35万円を使用する。 2名の研究協力者とともに9月頃に韓国の現地調査をおこなう。そのための旅費、通訳者への報酬、資料購入費等として約40万円を使用する。 沖縄での補充調査のための旅費・資料購入費として約15万円を使用する。 次年度使用額560円は、上記の調査の際、資料購入費として使用する。
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