研究課題/領域番号 |
23530375
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
川瀬 光義 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (40195095)
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キーワード | 返還跡地 / 沖縄振興一括交付金 |
研究概要 |
韓国での基地返還跡地利用政策の実状について、ソウル市中心部の龍山基地、最大規模の返還が予定されている京畿道北部の東豆川市・坡州市、基地拡張がすすんでいる京畿道南部の平澤市、そして跡地利用政策に関する調査研究の実績が豊富な京畿開発研究院、韓国最大の環境NGOである緑色連合(GREAN KOREA)などを訪問し、基礎資料の収集と聞き取り調査をおこなった。現段階で明らかになったことは、①韓国では米軍基地が存在することによる自治体の歳入欠陥に対して、日本のような補填措置がさほどおこなわれていない、②韓国では返還地のほとんどが国有地であるため、主要な課題は跡地利用開発に必要な資金をどう調達するかにある、③国による財政支援の基本的枠組みは「駐韓米軍供与区域周辺地域等支援特別法」に定められている。その特別法では財政力が弱い東豆川市・坡州市への政府支援が十分でないのに対し、龍山基地跡地では国営公園の建設が計画されているため大量の国費投入が予定されており、国による財政支援の不均等が重要な問題となっている、などである。 また、沖縄の補充調査では、「沖縄振興一括交付金」の活用状況に関する資料収集をおこなった。返還が予定されている沖縄本島中部に位置する普天間飛行場などでは公有地がきわめて少なく、将来返還された際の利用政策を進める上で大きな障害となりかねないことが危惧されているが、この交付金を活用した公有地先買政策がすすめられつつあることが明らかになった。 研究協力者である林公則は、2012年度から施行された「沖縄県における駐留軍用地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法」が、従前法と比べてどのような特徴を有しているか、返還予定地の環境汚染の除去にどのように活用できるかを解明し、その成果を日本地方自治学会、日本平和学会などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で示した韓国の跡地利用3類型いずれについても、基礎資料の収集と現地調査をおこなうことができた。追加的に必要な資料については、京畿開発研究院、緑色連合(GREAN KOREA)の協力で収集できることとなっている。また、京畿開発研究院と代表者の所属機関との間で正式な研究交流協定を2013年3月に締結した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年度は、これまでに収集した日本と韓国の跡地利用政策に関する資料の比較分析をおこない、研究目的で示した課題の解明をすすめる。研究代表者である川瀬は、跡地利用財政政策の日韓比較をおこなう。研究協力者である林公則は返還地の環境汚染除去をめぐる諸問題の解明に取り組む。もう1人の研究協力者である真喜屋美樹は、沖縄県読谷村を主たる事例として、返還跡地の農業的土地利用をすすめるうえでの課題を明らかにする。 以上の成果を、2013年11月に韓国に行われる第11回アジア太平洋NGO環境会議で「基地跡地利用政策の日韓比較」という分科会を設けて発表する。その分科会は、韓国の緑色連合との共同企画とする予定である。 これまでの研究成果をまとめた単著『基地維持政策と財政』を出版する。これについては、科学研究費補助金(研究成果公開促進費)の交付が内定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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