大規模な基地返還が予定されている沖縄県において跡地利用を円滑にすすめる上で、①高額な軍用地料を得てきた地権者の経済的不安を取り除く、②返還予定地の公有地の拡大をどのようにすすめるか、という2つの克服すべき課題があった。2012年度に施行された「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法」には、返還時から使用収益できるようになるまで補償が可能となる措置が盛り込まれており(従来は補償期間が限られていた)、これによって①については大きな障害とならなくなった。②については、返還予定地を有する自治体の財政上の制約が最大の障害であったが、2012年改正の沖縄振興特別措置法で新たに設けられた沖縄振興特別推進交付金を活用できることとなった。これによって返還跡地利用をすすめる大きな問題を克服できる可能性が広がったことを明らかにした。なお韓国の場合は、返還予定地の大部分が国有地であることからして、上記のようなまったく問題は生じない。 また、環境汚染の除去費用については、日米(または韓米)地位協定による制限によって返還前の立入り調査など汚染状況の事前把握が困難であること、汚染者負担の原則が適用されず、除去費用がすべて日本(または韓国)政府の負担となっていることなど、日韓に共通する課題が明らかになった。 今ひとつ日韓に共通する課題は、跡地利用計画の作成と実現の困難さである。ただし、その要因は異なる。日本の場合は、返還計画の大部分が沖縄県内に新たな基地を建設することが条件となっているため、実際に返還がいつ行われるかまったく見通しがたたないことが、関係者の計画作成意欲を大きく阻害している。これに対し韓国の場合、返還は着実に実施されているが、対象地の自治体の財政力が脆弱であるにもかかわらず、国による財政措置が不十分であることが主たる要因であることが明らかになった。
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