研究課題/領域番号 |
23530377
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
渡辺 泰明 高知工科大学, 経営学部, 教授 (70367811)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高次モーメント / 歪度 / 尖度 / 行動ファイナンス / プロスペクト・レシオ |
研究概要 |
従来の平均(1次のモーメント)・分散(2次のモーメント)アプローチに基づくアセットアロケーションについて金融危機前と金融危機後で投資家のリスク許容度に応じてどのようにアセットアロケーションが変化するかを海外協力研究者であるTerry Marsh氏、Paul Pfleiderer氏と共同でシミュレーション分析を行い、現代ファイナンスの専門誌に論文が掲載された。これらの分析結果は高次モーメントの場合にも参考になると考えられる。研究実施計画書に記載した通り、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学、およびヨーロピアン・スクール・オフ・マネジメントに滞在して実務家や教授陣と意見交換をしながら、歪度(3次のモーメント)と行動ファイナンスのプロスペクト理論を考慮に入れたパフォーマンス評価指標は予定通り完成した。さらに、尖度(4次のモーメント)を考慮に入れた場合は4次元での取り扱いとなり視覚的に把握することは困難であるが、参考文献等をヒントに各種のパフォーマンス評価指標を検討した結果、筆者は独自に新たなパフォーマンス評価指標を作成した。具体的には、分散、歪度と尖度をリスクと捉えて3次元空間座標軸の枠組みで把握する。そして、平均を縦軸に3次元空間座標軸で分散、歪度と尖度をリスクと捉えた合成ベクトルの大きさを横軸にとることにより尖度までを考慮に入れたパフォーマンス評価指標を作成した。換言すれば、これは尖度までを考慮に入れたシャープ・レシオに相当する。そして、分子に行動ファイナンスのプロスペクト理論を分母にダウン・サイド・リスクの考え方(ソルティノ・レシオが該当する。)を導入したものを作成した。パフォーマンス評価指標の最終目標とするモデルの原型が1年で仕上がったことは意義深く、改良を加えてより精緻なモデルの完成に向けて挑戦することは重要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の平均・分散アプローチに基づくアセットアロケーションについて金融危機前と金融危機後で投資家のリスク許容度に応じてどのようにアセットアロケーションが変化するかを海外協力研究者2人と共同でシミュレーション分析を行い、専門誌に論文が掲載された。これは、高次モーメントを考慮する際の基礎的な資料となると思われる。また、4次までのモーメントと行動ファイナンスのプロスペクト・レシオを考慮に入れたパフォーマンス評価指標の原型が既に筆者により作成されたため。
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今後の研究の推進方策 |
6月中旬から1か月間、パリにあるESCP-EAP(欧州経営大学院)に客員教授として招聘されるため、海外協力研究者の一人であるEmmanuel Jurczenko氏と意見交換しながら、筆者が既に作成した4次のモーメントまでを含めたパフォーマンス評価のモデルを検証して完成させるべく全力を尽くしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に予定していた最新の金融工学用のMATLABソフト購入が金融工学用のソフトに関するセミナー対象日が授業等と重なり出席できなかったことと、スタンフォード大学の海外協力研究者の招聘が先方の都合で平成24年度に繰り越されたために次年度使用額がプラスの残高となった。平成24年度は交付申請書に従って計画通りに研究費を使用していく予定である。
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