研究課題/領域番号 |
23530377
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
渡辺 泰明 高知工科大学, 経営学部, 教授 (70367811)
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キーワード | 高次モーメント / 歪度 / 尖度 / 行動ファイナンス / プロスペクト・レシオ / パフォーマンス評価指標 |
研究概要 |
金融モデルの弱点のひとつは、「ブラックスワン・イベント」の問題として知られるようになった極端な事象をとらえるモデルの存在がまだあまり知られていないことにあり、従来の平均(1次のモーメント)・分散(2次のモーメント)アプローチでは現実的ではない。例えば、短期的な資産のリターンに関する非正規性は経験的によく知られており、「極端な事象」「ペソ問題」「ファットテール」「急尖的分布」にも当てはまり、この場合は歪度(3次のモーメント)と尖度(4次のモーメント)を考慮に入れる必要がある。そこで、筆者は海外協力研究者であるTerry Marsh氏、Paul Pfleiderer氏と共同で「ブラックスワン・イベント」を織り込んだリスク予測の更新により、これまで想定し得なかった事象が分析できるようになっていることを、データを示しつつ解説した。この論文は経済セミナーの専門誌に掲載された。これらの分析結果は高次モーメントの場合にも参考になると考えられる。昨年度、筆者は独自に新たなパフォーマンス評価指標を作成した。具体的には、分散、歪度と尖度をリスクと捉えて3次元空間座標軸の枠組みで把握する。そして、平均を縦軸に3次元空間座標軸で分散、歪度と尖度をリスクと捉えた合成ベクトルの大きさを横軸にとることにより尖度までを考慮に入れたパフォーマンス評価指標を作成した。そこで、筆者はポルトガルで開催されたファイナンス学会やパリにあるESCP-EUROPE(欧州経営大学院)に客員教授として招かれた際、パフォーマンス評価指標に具体的なヘッジファンドのデータを用いて実証分析を行った結果を発表した。その際に海外協力研究者の一人であるEmmanuel Jurczenko氏等の教授陣と意見交換を行った。その結果、筆者のパフォーマンス評価指標に改良を加えることができたため、モデルは完成の域にほぼ達したと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金融モデルに関して「ブラックスワン・イベント」を織り込んだリスク予測の更新により、これまで想定し得なかった事象が分析できるようになっていることを、データを示しつつ解説した海外協力研究者2人との共同論文が専門誌に掲載された。これは、高次モーメントを考慮する際の基礎的な資料となると思われる。また、筆者が作成した4次までのモーメントと行動ファイナンスのプロスペクト・レシオを考慮に入れたパフォーマンス評価指標については、ポルトガルで開催されたファイナンス学会や客員教授として招かれたパリにあるESCP-EUROPE(欧州経営大学院)にてヘッジファンドのデータをもとに実証分析した結果を発表して貢献度が高く評価されると同時に若干の改善点も指摘されたため。
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今後の研究の推進方策 |
海外協力研究者の一人であるEmmanuel Jurczenko氏と意見交換しながら、筆者が既に作成した4次のモーメントまでを含めたパフォーマンス評価指標のモデルを改善しつつ検証して早期に完成させるべく全力を尽くしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は共同研究提携先のみずほ証券&コンサルティングから会社都合による提携解消を通知されたため、バックテストなど入力作業を中心とした事務処理を自分で行うことの負荷を考慮してTA(研究補助員)の費用を多めに計上した経緯がある。しかし、最終年度の次年度は国内と海外の両方の学会において完成したパフォーマンス評価指標の実証分析結果を発表するための旅費と米国の専門誌に投稿するための諸費用(TA(研究補助員)の費用)に研究費を充当する予定である。
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